第14章 磯辺に鬼鮫 ー裏ー
突く度に、少しずつ軋むように牡蠣殻のより奥へ、深くへ入り込む痛みと快感が間断なく襲って来る。波すらない。
肩で牡蠣殻が荒い息を吐いている。時折耐えかねたような声がくぅと混じり、華奢な腰が逃げる様に浮く。それでもいつの間にか鬼鮫の首に回された腕は抱き付く力を弱めない。
汗が噴き出して滑り擦れ合う肌が、合わさった箇所と等しく扇情的な水音を立てた。
粘着質で淫らな音と短い息使いが、長く室を支配する。
気付くと微かに不思議な香りがし始めた。恐らくは発情する牡蠣殻自身から発されているのだろう。沈丁花のように沈み込んで残る独特な香り。ほんの僅か、だが狂おしい匂い。
思わず勢いがついて突き上げる腰に力が入り、最奥に達した。柔らかい壁が鬼鮫を押し返し、牡蠣殻の中で鬼鮫は更に大きく硬くなった。
「くッ」
呻き声を洩した鬼鮫は、入り口近くまでぬるりと引いたものでもう一度強く最奥を突いた。
「う…」
牡蠣殻が声を上げて鬼鮫の肩に歯を立てる。鬼鮫は牡蠣殻の髪を鷲掴みしてその顔をもたげ、半開きの口に深く舌を挿し込んだ。
また目尻に涙が滲んでいる。辛いのか。けれど薄い舌は懸命に鬼鮫の荒々しい愛撫に応えて来る。
背中に手を回し、舌を絡め合ったまま、繋がり合ったまま牡蠣殻を横たえた。顔を離せば互いの口から唾液が糸を引いて、牡蠣殻の頬に鬼鮫の汗が滴った。
牡蠣殻の顔から血の気が抜け出している。頬や目尻、耳、手足の先、そして唇が赤いだけに肌味の悪さが際立つ。
薬を呑ませなければ。
思いながら止まらない。膨れた肉芽に手を添えると牡蠣殻がぎゅっと目を閉じて顔を背けた。鬼鮫の腕にかかった手に力が入って爪が立つ。指を滑らせると腰が浮いた。
「く」
肉芽を指先で甚振りながら抜き挿しを繰り返す。膣がやわやわと、襞が吸い付くように鬼鮫を嬲る。
抱き合う事を思って予測し続けた通り、痛くても悦んでも牡蠣殻は大して鳴かない。意地もあるのだろうが溜めて堪える。それが良かった。牡蠣殻らしい。
また汗が滴って牡蠣殻を濡らす。赤く浮き上がった傷痕の上で、汗の玉が光っている。
牡蠣殻が目を開いて鬼鮫を見た。忙しく息を継ぎながら腕を伸ばして首に手を回して来る。引き寄せられて抱き返した鬼鮫の動きが激しくなった。鬼鮫を咥え込んだ牡蠣殻がビクビクと締め付けて来る。