第14章 磯辺に鬼鮫 ー裏ー
敵いもしないのに足掻く、時折見せる牡蠣殻の意地が嫌いではない事に改めて気付いた。
しかし無駄だ。ここでも牡蠣殻は鬼鮫に敵いはしない。
充血した襞を掻き分けてまた指を刺し入れる。牡蠣殻が身を縮めた。膣は熱く、前より柔らかくはなっていたがまだきつい。喉に溜めていた息を吐き出す音がする。手を翳せば恐らくその息も熱いのだろう。
滑りはいい。十分に濡れている。しかしまだ解してやった方がいい。
舌と指を使いながら思案したとき、不意に牡蠣殻が体を起こした。
脱力したとばかり思って油断していた鬼鮫の指が膣から抜け、訝しんで顔を上げたところで牡蠣殻と目が合う。
牡蠣殻は不思議な顔をしていた。
怒ったように眉間に皺を寄せ、口を引き結び、そのくせ潤んで恥ずかしげな柳の目。
一瞬呆気に取られた鬼鮫から離れて座り、手をついて起きかけた鬼鮫に腰を伸ばして顔を寄せる。驚く鬼鮫に我から口吻して、その唇を甘噛みした。下唇を一度。噛んだ箇所にチロリと舌を走らせて顔を離す。
目が合うと、柳の目と赤い顔で決まり悪げに笑う。
鬼鮫は牡蠣殻を引き寄せ、長い腕で縛り付けるように抱き竦めた。
「牡蠣殻さん」
呼び掛けて苦笑し、牡蠣殻の腰を持ち上げ、胡座をかいた足の上に乗せる。
軽くて心許ない。が、汗ばんで貼り付き合う肌の感触が生々しく確かで安堵する。
素直に鬼鮫の足に囲われた牡蠣殻の腰を今一度持ち上げた。
牡蠣殻の頭を肩に凭れ掛からせると、怒張した己を濡れて柔い箇所にあてがう。
自分も牡蠣殻も馬鹿に熱い。鬼鮫は歯を食い縛って笑った。触れただけで果てる訳にはいかない。
浅い立ち膝の格好で鬼鮫の肩に顔を埋めた牡蠣殻の頭を片腕で掻き抱き、腰を突き上げた。
牡蠣殻が跳ねるように背筋を伸ばし、引き攣れた声を呑む。離れかけた頭を押さえ込み、鬼鮫は更にきつく歯を食い縛った。
半ばまで牡蠣殻に食い込んで止まった己からビリビリと痺れが走って思わず瞠目する。鋭い痛みを伴って猛烈な感覚が身中を震わせた。
ぎしりと腰を引く。浅く中を突く。
通じ慣れない狭い膣に人並み以上に大きなものを挿れれば、痛みを感じるのは挿れられた方ばかりではない。
が、その痛みすら強烈な愉悦。
この女を、鬼鮫から逃げ続けて来た牡蠣殻という女を、間違いなく腕の中に囲っているという激しい充足感。