第14章 磯辺に鬼鮫 ー裏ー
「……あなた嬉しすぎると鼻が垂れるんですか…。つくづくどういう体の作りになってるんです…」
「干柿さんはそうならない?」
「なりませんよ。馬鹿な事聞かないで下さい」
「感極まると鼻が垂れませんか?おかしいな…」
「おかしいのはあなたですよ。汚い話は止めなさい」
「犬や猫が喜びのあまり失禁するのと同じような感じだと思うんですがねえ…」
「…あなたは犬や猫なんですか」
「自分では違うと思っていますが」
「そう願いますよ。流石の私も獣姦は遠慮したいですからね」
「干柿さんなら魚姦では…」
「口を縫い付けますよ」
「はい、すいません」
抱えられた膝を伸ばそうと更に上にずれた牡蠣殻の頭が寝台の背に当たって止まる。
「どうもあなたを見ていると力が抜けてるんだか緊張しているんだか、よくわからないんですが」
言いながら背中に手を回してぐいと牡蠣殻を引き下ろし、鬼鮫は足を割ってその間に体を滑り込ませた。
「今何をしているのか十分に把握してらっしゃるんですかね?」
「……そりゃお互いこんな格好してるんですから…」
「ならこれから何がどうなるかもわかってらっしゃる?」
「相応に」
「…甚だ心許ないですがまあいいでしょう。兎に角そう言うなら逃げるのは止めなさい」
牡蠣殻の頭の上に大きな掌を載せ、鬼鮫は真顔で続ける。
「ガツガツ頭をぶつけていたら集中出来ませんよ。今は他の事に気を取られないで欲しいですね」
「本気の貴方に何かされてるときはまず他の事なんか気にしちゃいられないですよ。容赦ないですから干柿さんは」
「ほう、思いがけず殺し文句がお上手だ。嬉しいですね」
「……殺し文句?不思議な受け止め方しますねえ…」
「不思議?そうですか?」
「いや、干柿さんらしいかな…ぅひ…」
割り込んだ腰を押し付けられて牡蠣殻が妙な声を上げた。
「ピロートークは終わりです」
「…枕に何か仕込んでるんですか?」
「…何言ってるんです」
「枕は喋りませんよ」
「馬鹿は黙りなさい」
密着する腰と腰の間に手を指し入れて、鬼鮫はいきなり牡蠣殻の核心に触れた。
「ぅわ、ちょ、待って下さ…んぐ…ッ」
牡蠣殻の口を自分の口で塞ぐと、指先で探りを入れる。
「…んぅ…ッ」
藻掻く牡蠣殻を抑えながら指を動かすと、滑らかに潤っているのがわかった。