第14章 磯辺に鬼鮫 ー裏ー
「…ほう…」
口を離して牡蠣殻の顔を見る。
「いやに普通に話していると思えば、強がりでしたか」
牡蠣殻の顔がカッと赤くなった。
「情緒面はともあれ、体は人並みに感じるようだ。安心しましたよ」
「……」
何か言い返そうとして言葉が出ず、牡蠣殻が口を噤む。
減らず口が止まった。
鬼鮫はしてやったりの笑いが堪えきれず、大きく口角を引き上げて牡蠣殻の顔を間近く見詰めた。
「言いたい事があるならどうぞ言ってみて下さい。いつものように、いくらでも、好きなだけ」
閉じた襞をぬるりと撫でる。ひくっと牡蠣殻の喉が動いて口が開いたが、またも言葉は出て来ない。一度引いた赤みがみるみる全身を染めていく。
「どうしました?」
いっそ優しげに聞く鬼鮫を牡蠣殻が睨み付けた。
「悔しそうですねえ」
襞の間に指を潜り込ませて、鬼鮫は尚も優しげに話しかける。
「何時でも黙らせられると言ったでしょう?わかりましたか、どういう事か」
ぐっと口を引き結んで足を摺る牡蠣殻の感触が、悔しそうな赤い顔が鬼鮫を焚き付けた。指の腹で擦る襞が膨らんでぽってりして来ている。
牡蠣殻が顔を背けて唇を噛んだ。
「牡蠣殻さん?」
くっと指先を襞の奥、牡蠣殻の入り口に射し込む。
「ぅ…ッ」
腰を浮かせて歯を食いしばった牡蠣殻の平らな腹に額を載せ、鬼鮫は一息に指を突き立てた。
「ぁッ!…ぃつ…ッ、…くそ……ッ!」
指がぐっと締め付けられる。顔を上げると牡蠣殻の目尻と眉間に深いシワが刻まれていた。
「牡蠣殻さん」
鬼鮫は屈めていた背中を伸ばして牡蠣殻の目尻に滲んだ涙を舐めとった。
「まだ早いですよ、痛がるのは」
牡蠣殻が顔を背けて目をきつく閉じたままなのは、鬼鮫の指が中で動いているからだ。上側を緩く擦りながら、ゆっくりと抜き差しが繰り返される。
「……く…ぅ」
鬼鮫の唇が痛みに唸る牡蠣殻の耳朶を咥えた。甘噛みしながら舌を這わせる。
また指が締め付けられた。
耳朶から首筋の筋肉を噛みながら力を入れて舐め上げる。舌で指圧するような感覚で、刺激し、なぞる。
じわりと指の滑りがよくなった。
牡蠣殻の体が応えるのに誘われて、また唾液が湧く。