第2章 木の葉
敢えて至近からの吹き矢。生け捕る気か。
しかし何をそうも焦って仕掛ける?襲撃の段取りがてんでなっていない。妙だ。
訝りつつ体を捻って印を結びかけた自来也は、生温い風がヒュッと足元を捲いたのを感じて眉根を寄せた。
「いかぬ!磯辺、止めやれ!!」
爺の金切り声。
風が更に沸き上がる。
着物の裾がはためいたと思えば、フッと目の前から二人組の姿が消えた。
忽然と。
「……え、ええ⁉ええぇえ⁉なな何だってばよ⁉ゆ、幽霊⁉幽霊だった、今の⁉」
ナルトがうるさい。
自来也はしかめ面で女を見やった。
「……」
黒炭の目をすがめた女が、自来也と視線に気付いた。歯を一本欠いてた口元に、にやりと笑みが浮かぶ。
気持ちの良い笑みではなかった。第一目が正気のようでない。
膏薬の貼り付いた頬を伝って顎先から汗が滴っている。顔が白い。
「おっとと」
思わず前へ出た自来也の腕に、間をおかず女が棒のように倒れ込む。
「言わんこっちゃない…止めと言うたに…!」
爺がすかさず女を自来也からもぎ離すように抱きとった。
「おいおい、何じゃそりゃ。礼くらい言わんか。気の悪ぃ」
ナルトと顔を見合わせて、自来也は腕組みした。
「…先ず部屋に入れ。手当てしてやらにゃならんじゃろ」
自来也が顎をしゃくった先で、女の膏薬が赤く染まり、首元から覗いた包帯に血が滲み出た。
「傷が開いとる。それでなくとも弱っとるのにマズいぞ。話は後だ」
意固地気な表情を浮かべる爺をじっと見て、自来也はふむと息をついて苦笑いした。
「安心せいよ。取り敢えずソイツが正気になるまでは悪ィようにはせんから」