第3章 第1章 猛獣使いの世界へ
驚いた表情が見えるティアナだが、彼女からこちらへトラの意識を逸らすことに成功したようだ。
この間に彼女がもう一度笛を吹くタイミングがあればよかったのだけど、焦っているのか彼女が動く気配はない。
止む終えず私はトラに近づく。
昔から目つきが悪く、転生したであろう今でさえティアナにそっくりなはずなのに、トラに威嚇されまくっている。
いや、この場合は怪我をしているから威嚇しているのかもしれないけど。
「あ、アナタ危ないわよ!」
ロッテが忠告してくれるが、ティアナが宛にならないのでは自分で何とかするしかない。
私が一歩、また一歩と近づく度にトラは怯えたように体を震わせる。
「大丈夫。怖がらなくていいわ。」
私はなるべく優しめの声で、段々と姿勢を低くしていく。
トラの目の前まで来ると、私は立ち膝の状態でトラに手を伸ばす。
誰もが噛みつかれる!! と思っただろうけど射程の範囲に入ってさえしまえばこちらのものだ。
私はトラを撫でながら怪我の具合を確認する。
頭を撫でてあげると、トラは段々と大人しくなり腰を下ろした。
私は戦意が薄れたのを確認すると、素早く傷口に薬草を塗り、持っていたハンカチで応急手当てをした。
傷の手当てをしたことでトラも落ち着いたのか、そのまま眠ってしまったようだ。