第3章 第1章 猛獣使いの世界へ
カトライア商店街
私が商店街に入るのと同時くらいに
「き、キャァァァァァァ・・・・・・!!」
女性のつんざくような悲鳴が聞こえた。
声の方を見ると、前方にトラ。と尻餅をついて怖がっているロッテの姿が見えた。
ロッテはティアナの友達で、パン屋の娘さんである。
ロッテの悲鳴に気付いた人々は蜘蛛の子を散らすようにして逃げ出した。
ゲームではティアナ視点だったので、正面から獰猛そうなトラの表情が見えていたけど。
(そっか、自分で身動き取れるってことはこういう視点もありか)
なんて冷静でいられたのは、ティアナが笛で眠らせることを知っていたからかもしれない。
「だ、誰か・・・・・・!」
ロッテが助けを求める。
私と目が合った気がしなくもないが、猛獣使いではない私に出来ると言えばトラを手当てしてあげることくらいだろうか。
トラとロッテを挟んでで向こう側にティアナが見えた。
笛の音が響く。
トラは笛を吹いたティアナの方を忌々しげに見つめる。
本編でも2回吹かなければトラは眠らなかった。
もう一度ティアナが笛を吹く。
・・・・・・本来は、本来はここでトラは眠りにつくはずだった。
しかし、待てどもトラは眠る素振りを見せない。
このままではティアナが危険だ。
「っ・・・・・・!」
私は首にかけてあったティアナの笛にそっくりな笛を吹いた。
同じような甲高い音が周囲に響く。
トラが今度はゆっくりとこちらを向いた。
残念ながら猫好きの私にトラは可愛い猫のようにしか映っていなかったのだけど。