第2章 日常に融けゆく
流石に今回はやり過ぎたと思い、いつも通り、気の優しい丸田くんを呼んで保健室まで連れて行ってもらった。そしてそれに私もついて行った。体内の酸素量は正常に戻したし、そのうち目を覚ますだろう。リカバリーガールもやれることは無いって言ってたし。
ベッドに横になる爆豪くん。普段あんなに五月蝿いし口が悪いのに、寝顔は意外と可愛い。黙ってれば、とまでは言わないけど、せめてもう少し控えめな性格にでもなれば、個性は派手だし、戦闘センスもあるし、頭もいいらしいし、女の子にもヒーロー事務所にもモテそうだけど。損な性格だな。まあ、そのおかげで私は最近楽しませてもらってるけど。
「日菜子ちゃん、三年生なんだからもう少し力の使い方考えないとダメよ。また一昨年みたいなのはあたしゃあ嫌だからね。」
「はーい。」
一昨年の事を口にされると私は滅法弱い。雄英に入って常にトップだった私。日本の最高峰であるこの高校で入学当初から圧倒的な力。プロヒーローである先生達から褒められ、天狗になってるつもりなんかなかったけど、上級生から見た私は頗る生意気に見えたらしい。上級生からの嫌味を嫌味として捉えず、私のマイペースな性格がそれに油を注ぎ、三年生からの反感を買ったらしい。
そんな私に腹を立てた三年生が私が最も機嫌の悪い時間帯である朝、喧嘩越しで突っかかってきた。先輩達からの言葉が雑音にしか聞こえず、それに苛立ちを覚えた。それを見かけたアキちゃんが止めに入ろうとした時、先輩が邪魔だと言ってアキちゃんを押した。そしてアキちゃんはその場に尻餅をついて倒れた。それを見たわたしは朝だということもあって、非常に機嫌が悪く、尻餅をついたアキちゃんの姿を見て怒りが抑えられなかった。本能の赴くままに個性を使い、私を取り囲んだ三年生達三人組の体内の酸素を完全に奪った。体内の酸素が0になるということは、体の機能の全てがストップするという事。その事態にいち早く気付いた相澤先生の個性により、三年生達は大事には至らなかったものの、危険な状態に陥れてしまったことは事実。ヒーローを目指す私は同じ志を持った同志を死の淵に立たせてしまったのだ。私の人生一番の汚点であり過ちである。その後、先生達にこっぴどく叱られた。