第6章 守りたいもの
「相澤先生に凄く怒られたかもしれないけど、あの時切島くんがいなかったら状況は最悪な方向に進んでたかもしれない。勝手に出てきちゃったのは褒められた事じゃないけれど、切島くんは確かに、ヒーローだった。切島くんは絶対に凄いヒーローになれるよ。だから気を落とさないでね。」
「筒井さんにそんな風に言ってもらえるなんて嬉しいです。けど、筒井さんがそんな風に話せるなんて正直驚きました。」
「私も自分がこんなに流暢に話せるなんてビックリしてる。」
そう言うと切島くんは笑った。その笑顔はさっきまでの悲しそうな笑顔じゃなかった。いつもの切島くんの笑顔だ。
「爆豪に会いに来たんっすよね?爆豪の部屋は四階の手前から二番目の部屋ですよ。多分寝てると思うけど。」
「ありがとう。私、爆豪くんのとこ行ってくる!」
切島くんに言われた通り、四階の爆豪くんの部屋をノックしたが返事は無い。ドアノブに手を掛けるが鍵が閉まってる。…仕方ない。私はドアノブの酸素を増やし、それを、錆させた。錆びたドアノブは簡単に壊れ、ドアが開いた。
「おじゃましまーす。」
ベッドで寝ていた爆豪くんは飛び起きた。
「は!?なんでテメェがここにいんだよ!?つーか鍵掛けてたのに、どうやって入ってきやがった!?」
「ドアノブ壊しちゃったー。」
そう言って、錆びてボロボロに崩れたドアノブを見せると予想通り爆豪くんにキレられた。以前となんら変わりない普段通りの爆豪くんを見て安心したのか、泣くつもりなんてなかったのに、目から涙が零れた。
「あれ…?おかしいな。」
涙を拭うが、自分の意思と無関係に零れ落ちる涙。最近泣いてばっかりだけど、別に私が泣き虫って訳じゃない。どちらかというと我慢強いタイプ。痛みにだって強い。大怪我して泣いた事もない。喧嘩して泣かした事は沢山あるけど泣かされた事は無い。
「クソッ…何泣いてんだよ。」
あの時みたいに優しく涙を掬ってくれる爆豪くん。その手の温もりが愛しくて、爆豪くんに触れれる事が嬉しくて涙は止まらなかった。