第6章 守りたいもの
出現した脳無を制圧し、真っ先にオールマイトの元へと飛んでいったグラントリノさんを追い掛けた。長時間、それも広範囲で個性を使い過ぎたせいで、私の体力は限界に近付いていた。
「…うそ、」
遥か前方に見えた人物の姿に驚いた。切島くんだ。切島くんが空を飛んで、爆豪くんの手を掴んだ。そして、追い掛けてくる敵をMt.レディが止めた。そしてそのまま爆豪くん達はその場を去って行った。…助かったんだ。爆豪くんを敵連合から救い出せた。…良かった。
そしてグラントリノさんに遅れを取ったが、私も現場へと駆けつけた。
「…維兄…?」
血だらけで動かなくなった維兄がそこにいた。腹部には大きな穴が空いている。その穴から血がドクドクと流れてくる。
「やだ…!止まってよ!維兄!維兄!」
呼び掛けても返事は無い。維兄の体から血が流れるのと同じように私の目からも涙が溢れる。
維兄は、凄いヒーローで、私の自慢。貴方に憧れてヒーローになりたいと思った。そして私の目標でもあった維兄。こんな所で死なないでよ!
「私の目標なんだから…っ!こんな所で死ぬな馬鹿!」
そう叫ぶと、繋いだ手が微かに私の手を握り返したような気がして顔をあげた。
「…大した怪我はないようだな…。良かった。」
「自分の方が、大怪我、な、のにっ、私の心配、する、なんて、馬、鹿じゃ、ない、の…っ?」
「…ヒーロー、だか、ら、な。」
そう言って力無く笑う維兄。私にとってのNo.1ヒーローはやっぱり維兄だよ。