第2章 日常に融けゆく
「死ねえええ!!」
廊下を歩いていると目の前に現れた爆破少年もとい、爆豪勝己。今年度のヒーロー科の首席合格者であり、去年ヘドロ事件によってちょっぴり有名人である彼に目を付けられてから、学校にいる間中、至る所で襲い掛かってくる。
彼の右からの大振りをスッと交わす。個性を使って殴ってくるつもりだったのだろうが、私の個性によってそれは起きず。背後からの回し蹴りを避け、何事もなく歩く私に腹が立ったのか、というか彼はいつも怒ってるけど。ポキャブラリーの少ない罵声を上げ、攻撃をしてくる彼のそれを何事もなく避ける。
三年生の教室が並ぶ階に彼がいることは最早三年生の日常となりつつある。最初の頃は人目を引いていたが、それも数日すれば、見慣れた光景へと変化する。
「アンタ達毎日毎日飽きないわね。」
「あ、アキちゃん。」
保健室から帰ってきたアキちゃんは呆れ顔で私達を見る。その間も爆豪くんからの攻撃は続くが、かすりもしない。
「大丈夫だった?」
「大した怪我じゃないし、リカバリーガールに治してもらったし、もう完治。」
「良かった。」
「俺を無視すんじゃねええ!!!」
攻撃が一手も決まらなかった事と、無視されたことに腹を立てた爆豪くんは、爆弾の如く怒った。いい加減五月蝿いな、と思って個性を使い彼の体内の酸素を一気に奪うと、その場に崩れ込む爆豪くん。毎回こうなる事は本人だって分かってる筈なのに、飽きもせず私に挑んでくるのは馬鹿なのか、ただの負けず嫌いなのか。五月蝿いと思いながらも、こうやって私を倒そうと奮起するヒーローの卵がいるという事実は少なからず私の乾いていた心に少しの潤いを与えた。まあ、全く相手にならないのだけど。