第1章 爆破少年
が、私はその拳を素手で受け止めた。爆破さえしていなければただのパンチ。二年間戦闘技術を学んできた私からすればただのパンチなんて怖くも何ともない。
「酸素がないと君の個性使い物にならないね。」
私の個性は酸素を自在に操る個性。彼の掌を無酸素状態に変えれば爆破は起きない。そして、私が操れる酸素は空気中のものだけではない。体内の酸素もまた然り。
「テレビ見てたなら私の個性知ってるでしょ?」
彼の体内の酸素を極限まで奪うと、彼は今朝同様、その場に膝を着いた。これ、あんまりやり過ぎると脳に影響残るから、敵以外には使いたくないんだけど、彼から自由を奪わないと話も聞いてくれそうにない。彼の周りの酸素を奪う事だって出来るけど、それって酸欠になるまで時間かかるし、手っ取り早いのは体内の酸素を奪う方。
「君の個性じゃ私には勝てないと思うよ?あ、話聞こえてる?」
悔しそうに私を見上げ、クソが、と呟く所を見ると聞こえてるのだろう。
「ねえ、丸田くんこれ、一年生の教室に返してきて。私お弁当食べたい。」
クラスメイトの丸田くん。クラスで一番背も高くガタイのいい彼にそう頼むと、爆破少年を俵担ぎをし、そのまま教室を出て行った。見かけは強面だけど、頼まれるとノーと言えない典型的な日本人な丸田くん。
「日菜子、アンタよく平然と弁当なんか食べる気になるわね。」
「だってお腹空いたもん。」
中学からの親友であるアキちゃんにそう言われながら、膝の上に広げたお弁当から唐揚げを食べる。溜息をつきながら先程爆破少年に蹴飛ばされた机を起こしてくれる優しいアキちゃん。
「さっきの子、また来そうじゃない?」
「なんか楽しくなってきたね。」
「は?こっちはいい迷惑なんだけど。」
長いことあんな風にライバル意識丸出しで私に突っかかってくる人がいなかったせいか、なんだか私はそれが嬉しくて堪らなかった。