第5章 君がいないと退屈なんだ
「オイ。」
放課後、久しぶりに爆豪くんが私を尋ねてきた。けど、演習試験の件を引きずって、机から顔が上げられない。
「んー…爆豪くんなんか用?」
「なんでそんなんなんだよ。」
「うーん…。」
机にへばりついたままの私はそんなにおかしいのか。まあ、確かにこんなの初めてだ。いつも筒井は凄いななんて言ってチヤホヤされてたり、筒井には叶わないと境界線を引かれたりしてたのに、演習試験不合格で赤点で補習が決定した私。クラスメイトから何度も励ましの言葉を貰ったが、そんなの傷口に塩を塗られてるのと同じ。時間さえあれば絶対勝てた。でも、これは演習試験であって、勝敗を決めるためのものじゃない。時間さえあれば、なんて思ってる時点で私は相澤先生に指摘された箇所を直そうとするどころか、その指摘された私の短所にまだしがみついてるって事だ。分かってはいるのに、こうも受け入れられないものなのか。天狗になってた鼻をポッキリと折られてしまったような気分だ。
「あー日菜子、演習試験、相澤先生と一対一でさ、日菜子と相澤先生の個性の相性って、最悪じゃん?それで不合格になっちゃって、赤点だったから落ち込んでんのよ。」
アキちゃんはそう爆豪くんに説明をした。確かに相性最悪だけど、そんなの言い訳にしかならない。相性が最悪であろうとヒーローに負けは許されない。なんて考えてたら後ろから襟元を捕まれ、無理矢理机から引っぺがされた。そんな事私にするの爆豪くんしかいないから、それが爆豪くんの仕業だと直ぐに分かった。背後にいて爆豪くんの顔は見えないけど、多分ガッカリした目で私の事見てるんだろうな。こんな私を見て爆豪くんはさぞガッカリしただろう。きっともう、爆豪くんは私に呆れて勝負なんて挑まなくなるだろう。爆豪くんの相手するの結構楽しかったんだけどなあ。