第5章 君がいないと退屈なんだ
「…まあ、日菜子、今回は相手が相澤先生だったから仕方ないよ。」
演習試験、結局私は相澤先生に勝つ事が出来ずタイムアップ。ステージからの脱出なんてする気も無かったから、ステージのど真ん中で相澤先生とやり合った。その結果、演習試験不合格。三年になり、初めて不合格となってしまった。勿論悔しい気持ちはあった。でも、相澤先生の凄さを改めて理解出来た。やはり上には上がいる。演習試験不合格でも、自分より強い人がいると分かっただけで私のこの退屈だと感じてしまうこの気持ちに潤いが与えられるとそう思ったのに残ったのは悔しさと敗北感。そして、爆豪くんにガッカリされてしまうんじゃないかという気持ち。こんな気持ち初めてだ。敗北とはこんなにも悔しいものなのか。机にうつ伏せたまま、顔を上げることすら出来ない。
勿論不合格なのは私だけじゃなかった。クラスの大半は不合格だ。でも、それでも今回の演習試験、合格者は数名いる。アキちゃんもその数少ない合格者の中の一人だ。
「マジカッコ悪い…。」
絞り出して出た言葉はそれだけだった。そして、期末テストの結果、もちろん私は赤点。夏休み丸々ヒーローインターンの筈だったのに、職場体験終了後、学校での地獄の補習が言い渡された。それに加え、期末テスト赤点だった私はインターン先が変更となり、ジーニアスへ夏休みの全てを捧げる事になってしまった。高校最後の夏休みだっていうのに一体私は何をやってるんだ。逃げるという選択肢を取っていれば可能性は0じゃなかった筈だ。相澤先生にも指摘されたが、私は戦闘を軽んじている。遊びの延長戦だと思っていると。自分の力に絶対的な自信があるが故に子供っぽさが抜けていない。ヒーローとはそんな軽い気持ちで務まるものじゃないと。その的確な言葉は私の心を傷付けるには充分だった。