第4章 退屈な日常
「維兄、遊びに来たよー!」
昨日同様、学校帰りにジーニアスを訪れた。だが、ジーニアスには維兄の姿も爆豪くんの姿も無かった。
「日菜子ちゃん、おかえり。」
「ん、ただいま。」
家でもないし、就職先に決定した訳でもないのにおかえりと言われたことに疑問を感じたが、おかえりと言われたからただいまと答えてしまった。ここで働いてるプロヒーロー達は皆、私が雄英卒業後ジーニアスと契約する事を望んでくれている。まだヒーローでもないヒーローの卵である私の事を強く求めてくれる事は嬉しいが、その髪型とジーンズは嫌なのだ。どこか、こう、のんびり昼寝でも挟みながら働けるような事務所があればそんなヒーロー事務所に務めたいものだ。
「ジーニストさんなら、爆豪くんと一緒にパトロールに行ったよ。」
「爆豪くんあの髪型で出ちゃったんですか?」
「勿論。今日はジーニストさんがガチガチに髪型固めてたから爆発しないと思うよ。」
うわあ、あの髪型で外にパトロールとか恥ずかしくて死ねる。あの髪型でパトロールに出掛け爆豪くんの姿を想像し、私は笑った。
「日菜子ちゃん、最近楽しそうだね。前来た時は毎日がつまらないって顔してたけど。」
「んー…最近、楽しみが出来たから。」
その楽しみとは爆豪くんの事である。最初爆豪くんに会ったときは朝から五月蝿い奴だなあ、くらいにしか思ってなかったのに、今となっては、爆豪くんがいないと退屈だと思ってしまうんだから、人間の心境の変化とは単純なものだ。
「もうすぐ二人共帰ってくると思うけど。」
「私、ちょっと外見てきます。」
そう言ってジーニアスにカバンを置いて外に出た。