第4章 退屈な日常
外に出て辺りを見回すが、二人の姿は見えない。早く爆豪くんに会いたいな。本当はいつもみたいに戦ったりしたいけど、今は職場体験中だし、爆豪くんの面白い髪型を見るだけで我慢しよう。なんて思いながら、二人の帰りを待っていると、ヒーロー科の筒井さんじゃない?と声を掛けられた。
「雄英体育祭見たよ!」
「今年も凄かったね!」
「最終種目、九人相手に本当よくやったよ!」
「テレビで見た時はもっと大きい子かと思ってたけど、普通の女の子だね!」
と、雄英体育祭を見たという人から賞賛を浴びた。電車通学だったりする子はこういうの電車内でよくあると言っていたが、私は雄英の近所に住んでいるし、学校から帰ってきたらお昼寝をする為あまり外にも出ない。だから、こうやって一般人に囲まれるのは初めてで驚いた。でも、こうやって褒めてもらえるのは素直に嬉しい。けど、私の存在に気付いた人達が一人、二人と増えていき、凄い人だかりが出来た。どうしよう、困ったなあ。これじゃあ維兄と爆豪くんが帰ってきても分からないや。元々身長は高い方じゃないし、大人に囲まれてしまって、外の状況が全く見えない。褒めてもらっているのだから、それを掻き分けて出ていくのも失礼かと思い、掛けられる言葉に相槌を打っていた。
「オイ!何してやがる!?」
人混みを掻き分けて来たのか、爆豪くんがその輪の中に入って来た。
「あ、おかえり爆豪くん。」
爆豪くんと私が言うと、周りの人達はそれが今年度の雄英体育祭一年生の優勝者である爆豪くんと気付いたらしく、今度は爆豪くんに声を掛け始める。それに爆豪くんはうるせえモブ共!と声を荒らげ、私の手を掴んでその輪から出て行って、そのままジーニアスへと入った。
「一々あんなの相手にすんな。馬鹿か。」
「あんなに一般の人に囲まれたの初めてでビックリしちゃった。…てか、爆豪くん、その髪型やっぱり似合わない。」
そう言って私が笑うと、爆豪くんは殺すぞ!と声を荒らげたが、ちっとも怖くない。そして、なんでか爆豪くんが繋いでくれた、というか掴んでいる手がじんわりと熱を持っているような気がしてそれが少し気になったけど、多分気のせいだ。