第2章 日常に融けゆく
「爆豪くん、優勝おめでとう。」
表彰式も終わり、一人になった爆豪くんの元を訪れた。表彰式よりは大分冷静さを取り戻してはいたけど、機嫌は悪いままのようだった。表彰式でのあの爆豪くんのすがと言ったら、もう本当に凄かった。最終種目での結果に納得のいかなかった爆豪くんは、目を覚ましてからも暴れ続け、手の付けられない状態で、その処置としてガチガチに体を拘束され、言葉を発せられないようにマスクもつけられてた。縛られて表彰台に立つ人なんて初めて見た。オールマイトから差し出されたメダルも首にかけるのを拒み、口に咥えさせられてたもんな。
「お前、なんつー怪我だよ!」
「最終種目終わってそのままこっち直行だったから。」
私の怪我を見るなり、ぐっと下唇を噛み締める爆豪くん。爆豪くんは私に一太刀も入れられないのに、三年生相手だとこうも簡単に怪我をしてしまう私を見てそれを悔しく思ったのだと思う。そんな爆豪くんの常に前を見る姿勢に私は凄く惹かれてる。爆豪くんがあと二年早く生まれてくれてたら、もっと楽しかったんだろうな。爆豪くんと出会ってからそればっかりだ。
「…とっとと行くぞ。」
そう言って私は爆豪くんに担がれた。それは女の子の憧れのお姫様抱っこや、おんぶなどではなく、俵担ぎ。私は米か。
「爆豪くんって何だかんだ言って優しいよね。」
「落とすぞ。」
表彰式ではあんなんだったけど、私は爆豪くんにヒーローっていう職業はピッタリだと思うよ。そう思ったけど、それは口にしなかった。それを言えば冗談ではなく本当に落とされると思ったからだ。
爆豪くんに俵担ぎをされリカバリーガールの元に連れていかれ、リカバリーガールのおかげで、額の傷も骨折も直ぐに治った。そしてそのまま爆豪くんと別れ、家に帰り、今日の雄英体育祭の一年生の録画を見た。雄英体育祭で奮起する爆豪くんの姿を見て、やっぱり爆豪くんっていいなあ、と改めて思った。