第1章 こたつ、出しました
「ふぇ~っくしょん!」
いくら日差しはあると言っても、やっぱり海から吹き付ける風は冷たくて、僕は盛大なくしゃみをすると同時に、鼻をズズッと啜った。
「家、入りましょうか」
和の提案に、僕は迷うことなく頷いた。
「布団はもう少し干しときましょうね? まだアナタの布団、乾いてませんから」
和の言う通り、僕の描いた世界地図は、まだその形を鮮明に残していた。
「コーヒーでも淹れましょうか?」
僕がリビングに入ると、和がキッチンから声をかける。
「うん。それよりさ、ちょっとお腹すいたかも…」
ここへ来る途中コンビニで買ったパンと牛乳以外、何も口にしていないことを思い出した。
「じゃあ、何か適当に作ります?」
和がスーパーの袋をガサガサと漁るのを、僕はカウンター越しに眺める。
「ねぇ、何作るの?」
カウンターに次々並べられていく食材。
食パンにレタス、ハム、チーズ…
あっ!
「サンドウィッチか!」
「正解。これなら簡単に出来ますからね」
パンに挟むだけなら、料理がそれ程得意じゃない僕達だって出来る。
「手伝うよ」
僕はキッチンに入ると、和の横に並んだ。
「じゃあ、智はレタス洗って貰えます? 俺、コーヒー淹れちゃうんで」
僕の手に、丸いレタスがポンと手渡された。