第2章 こたつでサミット
そして今に至る…
「ご飯、食べるんでしょ?」
床に放り出された翔さんのボストンバッグを部屋の隅に寄せ、カセットコンロの火を点けた。
「腹減ってるって言っただろ?」
何だよそのの言い方…
棘だらけじゃんか…
「はぁ…」
俺はため息を一つ零すと、翔さんの前に座った。
冷たい空気の流れる俺達の間で、鍋が勢いよく湯気を吐き出した。
「で、その子の名前は?」
こたつの中から元気に飛び出した茶色い物体を指さす。
「ん? あぁ、ミーだってさ。ミーミー鳴くからミー。安直すぎだってのな」
湯気の向こうで翔さんが呆れたように笑う。
「ソイツは? その白いモコモコ」
こたつの布団からひょっこり顔を出した白い物体に向かって、翔さんが顎をしゃくる。
その手にはもう箸と取り皿が握られている。
「こいつは…言い難いんだけど、”ショウ”っていうらしい…」
「へ? はぁ?」
翔さんの手から箸がポロリと落ちる。
「なんでまた…?」
だよね?
俺だって最初訊いた時は、思わず飲みかけの缶コーヒー噴き出したからさ…
「理由なんて知らないよ。俺だってビックリしたんだから」
コンロの火を弱め、鍋の蓋を開けると、途端に出汁の利いたいい匂いが溢れ出した。
俺は翔さんに向かって手を伸ばすと、取り皿を受け取り、そこにおでんをよそった。