第16章 朝を越えて
おそらく、そんなに怖がってんのは…
傍にあった机をたたかれたことだけではなく
クロス「お前がした魔術は禁忌だ!!
その意味が解ってんのか!!!」
本気で怒った奴を
あまりにも濃い怒気を、前にしたから。
恵土「…」がたがた
おそらく…
こいつの脳内では、フラッシュバックを起こしてるだろうな。
そういった今までの経験…
自身への存在に対して、散々に否定され続けて
それに対して、何か言うことさえもしてはいけなかった。
その日常が、何年もあったからこそ余計に…
自身に対しては、否定しか許されなかった。
感情も何もかも、ぶつけることさえできずにいた。
たとえ暴力や暴言を虐げられてもなお…
その環境が、余計に怒気などの些細な変化も感じやすくして
恐れを抱いてしまうんだろう。
他でもない、それをやってきた「人」という存在に対して……
クロス「一歩間違えば死んでいたんだぞ!!
俺が居なかったら確実に即死だ!その意味が解ってんのか!!」
恵土「ごめ
クロス「ごめんで済むか!!!」
恵土「びくぅっ!!)…」涙目&がたがた
アレン「ちょっと師s
クロス「てめえは黙ってろ!!」
アレン「え…;」
クロス「今話してるのは俺と恵土だ。
横やり入れてくんじゃねえ!」ぎろっ
アレン(師匠…
今まで見たことがないぐらい本気で怒ってる;)
クロス「お前の両親が、そうやって死んだのは知ってる。
でもな…
てめえまで自分の命投げ出して救おうとするんじゃねえ!!!」
恵土「っ…ぅ;;」ぽろっ
クロス「泣いて済むと思うな!!!!」かっ
恵土「ひっ」がたがた
クロス「涙拭け!!!」
恵土「うっ;ぐすっ;」ごしごし
がしっ
クロス「あいつらが、命張ったのは何のためだ?
お前を守るためだろ!!
だが…
あの時お前がやったのは、そうじゃねえ…
ただの自己満足だ!!!
それで残されたもんの心境を、解らねえお前じゃねえだろ!!!!!」
両肩を掴まれながら
恐怖の限界まで追い詰められた先にあるのは…
おそらく、こいつを想うからこそ心配しての「叱責」。