第9章 異変
恵土「っ;」涙
神田「その人の心ってのは
気持ちってのは、誰もが汲めるもんじゃねえ。
だが、お前は寄り添ってくれただろ。
愛してくれただろ。
同情じゃない…
痛みを知るから、その痛みを少しでも減らそうとする眼で……
人によっては
自分のことをよく知ってもいないのに
勝手に想ったり早とちりされてるってイラつくかもしれねえが…
俺とお前は、境遇が似ていた。
ただ一つ違うとすれば、支えとなっていた「誰か」が隣にいたことぐらいで…
いっぱいいっぱいだった俺に
馬鹿げたことやって、楽しい時間をくれた。
傷付いた心も、痛む心も…
お前の方が苦しいのに、それよりも優先してきた。
おせっかいとも思われるかもしれねえが
その根底には…
確かに、相手を思い遣ろうとする心があった。
うまく言葉で言えねえが…
きっと…それに救われたんだと思う。
そうしてきた相手が、他でもないお前だから…
だから…
迷惑だとか、勝手に先走んな。
それは俺が決めるし、嫌になったら離れる。
人の心を勝手に早とちりして、負担となってると思って
勝手に死のうとしてんじゃねえ。
逆効果なんだよ、そういうのは。
本当に笑ってて欲しいんなら…
どんなに辛くても生きろ。
どんなに辛くても、必死こいて走ってきただろ。
哀しくても痛くても、涙堪えて叫びも押さえて
無理やり笑って、強がって、大丈夫だってほざいて…
そんなお前だから、心配で仕方なかった。
力になりたいと思った。
そんなお前に、俺は惚れた。
お前のためなら…
死んでもいいとさえ、想えるほどに……」
そう言いながら、抱き締められる中
抱き返したまま
ふと、ユウを見上げると…
愛おしく思うものへ向ける、慈しみの眼が
木漏れ日と共に、頭上から私に降り注いでいた。
『愛おしくて、堪らない』
その全てが、物語っていた……
神田「…大好きだ」微笑
そう言いながら、抱き締める力を強めて…
優しく頭に手を触れながら近付き
その瞬間…
何かが、唇に触れた。