第9章 異変
誰かの悩みの種になるぐらいなら
笑顔の邪魔になるぐらいなら、死んだ方がいい。
そう思っていた。
でも…
迷惑じゃないって、言ってくれた。
それごと受け止めて、逃げたりしないって言ってくれた。
それがとても心強くて
安心して、何か笑えてきた。
ここに居ていいんなら
ここに居て欲しいなら
もうちょっと、一緒に笑っていたい。
楽しいことを、もっと一杯したい。
そう思って
死のうとする自分から、何とか踏ん張った。
けど……
もしも、自分の中の始祖神が目覚めれば
ここを捨てなくてはいけなくなってしまうのだろうか。
私自身という人格は、消えてしまうのだろうか…
悩みは尽きることはない。
生きている限り、常に湧いては出てくる。
痛みも、苦しみも、哀しみも……その全てが。
でも…
みんなが一緒なら、それでいいとさえ思えてしまうんだ。
それごと、乗り越えていけるって思った。
けど、少し違っていた…
私は、よく人から「心配してる場合じゃないだろ」って言われる。
「そっちの方が深刻だろうが」って。
けれど
私にとっては、どうしても人の方が大事なんだ。
助けられなかった。
苦しみを常に与え続けられる最中、何度でも蘇る「痛み」。
それを知ってるからこそ、余計に助けたくなる。
その「痛み」は、誰もが知っている。
でも、それがずっと続く「苦しみ」を
私は、身をもって知っている。
だから…
どうしたって、助けたくなる。
「お前が、大事だからだ」
その言葉と一緒に、余計なおせっかいをする。
だって、その人が
助けられた後で、幸せそうに笑っていられれば…
それだけで…
死ぬほど嬉しくなって、涙が浮かびながらも心から笑えるんだ。
だから…
それに辿り着くまでの「苦しみ」の過酷さを知ってるから
そのために、何度でも走ってしまう。
それが、どんなに…
恵まれたものなのか、解っているから。
救われるものなのか、身をもって知っているから。