第9章 異変
リナリー「え?」
神田「…リナは知らねえだろうが
こいつは、実験体だった。
イノセンス体内に入れられて
モルモットみてえにベッドに縛り付けられて、高圧電流を流され続けてきたんだと。
来る日も来る日も、5年半も…。
コムイが室長になる前の話だ。
元帥が止めに入って
実験が中止になってから、1か月間意識が戻らないほど過酷だったらしい」
リナリー「!!」
そういや、リナリーは聴くのは初めてだったっけ。
そう思いながらも、涙が止まらなくなっていた。
恵土「それと…
本当に、似てるんだ。
自分さえいなきゃ、誰も殺されずに済んだ。
自分のせいで、誰かが殺されるぐらいなら
最初から自分なんていない方がよかった。
見てるだけなら、いないのと同じだ。
最初からいない方がよかった…
消えてればよかったんだ、最初から;」
ベッドに横たわったまま
顔を身体ごと右へ逸らしながら呟くと…
神田「…俺は、そうは思わない」
恵土「!」
その目の前に立って、語り出した。
神田「…俺は、お前と出会えていなかったら
きっと、救われないまま生きていた。
あの人や、あいつのことにとらわれて
黒の教団を憎みながら、生きていた。
だが…
お前と会って、馬鹿げたことばっかして。
あの人と同じことを言ったかと思えば
アルマと同じことをしたかと思えば…
全く違う、バカなことを言い出した。
あの時…
俺は、本当に…心から笑えた気がした。
誰もが違って当たり前だと
それごとひっくるめて自分だと、体を張って教えてくれたのは他でもない「お前」だ。
お前と笑い合って、バカみたいなやり取りばかりして…
それがどこか、心地よかった。
ずっと、そうしていたいと思う自分がいた。
そして…
お前もそうだと、笑いながら言ってくれた。
そんなお前に出会えていなかったら、俺は…
きっと、今も……」
恵土「ユウ?…」
涙を浮かべながら呟かれる言葉はどれも…
ユウと出会って、共に過ごしてきた日々を思い出させた。
そして…
その想いは、痛いほどわかっていた。