生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第21章 教えてセンセイ(*)
「遅くなるよ?」
「お前を一人で帰すと思うか?俺が」
少し前にその身を狙われ、さらには攫われたところだというのに
いつだって思わずムッとしてしまうのは、彼女自身の自覚のなさにだ
戸惑いの表情を見せるセナの髪を指先で弄り、無言で返事を待つ
「…早く終わらせます」
「あァ」
伺うように一瞬向けられた視線がかち合うと、困ったように眉を下げへらりと笑った
そうしてセナは再び、視線を机に落とす
ローは指先に絡めていた髪を解き、頬杖をつけば真剣な横顔をただ眺めていた
観察するようにセナを見ていれば、テキストと問題集に向かい合う彼女は1人でコロコロと表情を変える
問題が解けたときの嬉しそうな顔、間違えたときの照れ笑い、躓いた時の難しい顔は…あまり目にしたことはないと記憶していた
しばらく観察を続けていれば、セナは段々と落ち着きなく視線をさまよわせ始め、口元を微かに引きつらせる
そうしてようやく、ゆっくりとローの方に顔を向ければなんとも複雑そうな笑みを浮かべ、伺うように視線を向けた
「あのさ、すごく言いづらいんだけど」
「なんだ」
「そんなに見られてると…とてもやりにくい、デス」
静かな空間で、まじまじと一挙一動を見つめられていると何だかとても居た堪れなくて集中できない
ローに悪気など一切なく、ただ待っていてくれているのは分かるのだけれど
「…」
「ご、ごめんね?私が待たせてるのに、ワガママ言ってるよね」
沈黙が続きローの表情が一切変わらぬことに、不安が増したのかセナは瞬時に泣き顔を浮かべて頭を下げる
「セナ」
「…ごめん、なさい」
「謝るなら、顔上げろ」
「うう…」
そうハッキリ命令されてしまえば、顔をあげるしかない。元々怖い方だと思うローの顔を、恐る恐る見上げるように頭を起こした
しかしその刹那表情を伺うより前に、セナの両頬に痛みが走る
予想外の出来事と、痛みに耐えるように思わずぎゅっと目を瞑った
「いひゃい…」
痛みの原因は頰を摘まれ、左右に引っ張られていると分かると薄っすら目を開け恨めしげに目の前の顔を見上げる
自分で言うのもなんだが普段はとことんセナに甘いローが、これほど怒る原因は紛れもなく自分のせいだけれど…なんだか腑に落ちない
『私だけが、悪いの?』