生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第20章 ハートに鎖(*)
これから口を吐く言葉が何の気休めにもならないことなど、十分承知している
紡ぐ言葉はローのただの自己満足でしかない
「だからいつどんな瞬間だろうと、お前を抱くのは俺だけだ」
過去を事実を、言葉一つで塗り替えることなど出来やしないのが紛れも無い現実である
けれどそんな彼の言葉を聞いたセナは、漸く安堵の微笑みを浮かべ涙を零した
今回ロー以外の見知らぬ人間に身体を暴かれそうになり、感じたのは明確な恐怖だった
それでも刹那の瞬間まで、諦めることで恐怖を押し殺すことが出来るのだと思っていたが…どうやら違ったらしい
「私が想うのは、抱かれるのはローだけだよ」
どんなに思考を手放そうとしても、決して消えてはくれず浮かんでくるのはローのことばかりだった
死を望んでもなお、いつだって彼は手を差し伸べて救い上げてくれる
「ロー以外考えられないよ」
幼くして出会った頃もそうだった
ローの前から姿を消した後、死ぬことに漠然とした不安は勿論あったけれど、それが怖いと思ったことは不思議と無かったように思う
まるで側にいつでも彼が居る気がしたから
だから時に薄れることはあっても、決して忘れることはなかった記憶と想い
それはセナが口にした、名実ともに言葉の意のまま…果たして真っ直ぐと彼に伝わるだろうか
「抱いて、ロー。貴方にしか、抱かれたくないの」
例えば鎖で縛り付けるなど、無駄なことだ。もし確かな愛を刻んでも、それより遥かに揺らぐ事のない事実が2人にはある
「珀鉛ごと私を受け止めてくれるローを、私もこれからずっと受け止めたい」
セナの胸に巣食う"珀鉛"は命を奪い尽くす白い悪魔、しかし2人にとってはそれが互いを引き離すことのない白い運命
「貴方を幸せにするのは、私だけでいいの」
「ッ…あァ。そうだ」
ただ幸せであることが、本当の幸せではない
幸せをもたらすべき相手がセナにはローで、ローにはセナでなければ意味など無いのだ
頰を濡らす涙ごと、両の手のひらで包み込まれる
触れるだけの口付けと、涙を掬い取る濡れた感覚
「そろそろ…勘弁してくれ」
「?…いッ?!」
頰を固定されたままでローの顔が一瞬見えなくなった、次の瞬間には首筋に柔らかな痛みを感じて
「散々焦らした覚悟は出来てんだろうな、セナ」