生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第20章 ハートに鎖(*)
「私の、心…」
真剣な表情のローに言われた言葉に、息が止まりそうだった
まるで酸欠にでもなったように呆然と開いたままの口で深く呼吸を繰り返す
「お前の心に鎖をかけられるのなら、そうしてやりたいくらいだ」
「鎖…?」
「鎖をかけて、一生俺に繋ぎ止めて…どんなに逃げようとも、離してやらねェ。…叶うはずもない、とんだ非現実的な話だけどな」
何度目かの、自嘲気味に浮かべられた儚い笑み
『ああ、そうなの…?』
救出されてからというもの、幾度となく目にするローの憂いを帯びた表情
地下で助けてもらった時から、彼は怒っているのでも呆れているのでもない
きっと、怯えているのだ
セナがローのためを思って起こした行動は、ことごとく彼を傷付け、こんなにも弱くしてしまっている
いつだって自信に満ち溢れて、聡明な彼が束縛するようなこと非現実的なことを口走るほどに
「ねぇ、ロー」
「…なんだ」
「私の心に鎖をかけて?私に、貴方を刻み込んでよ」
実際には、心に鎖などかけられはしないことなど分かっている
けれど雁字搦めになるくらい、ローでいっぱいにして欲しい
身体も、心まで…
「貴方しか、ローしかいらないの。私の全ては、ローだけのモノよ」
自惚れなどではない。確かに彼に愛されている
その事実を見て見ぬフリしようとしていたのは、潔く身を引こうとしたのは
セナ自身の弱さ
そんな自身の弱さを、隠すためだけに傷付けたようなもので
それは決して許されるはずなどない、けれど今なら確信があった
「私を、離さないで。ロー」
きっと許してくれる。そして、再び手を差し延べてくれるのだ
だって目の前の彼が、あまりにも優しい瞳で此方を見ているから
「…ハァ。卑怯だな」
「え…?」
どういうこと、と口を開きかけたとき身体ごと強い力に包まれた
それが抱き締められているのだと理解が追いついたのは、彼の匂いを胸いっぱいに吸い込んだとき
「離してやらねェと、言ったはずだ」
「…うん」
「こんな時だけ、逃げないお前が悪い。だから…卑怯だ」
普段はどんなに繋ぎ止めようとも、するりとこの手から逃げて行こうとする
けれど依存にも似た醜い執着心を見せた今この時、セナは逃げることなくこの手を取るのだ
これではまるで、彼女にただ上手く転がされているような
「いや、ねェな」