生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第20章 ハートに鎖(*)
「…言いたいことは、それだけか」
セナの鼓動を手のひらに感じながら、ローは静かに言葉を紡いだ
心臓に向けられていた視線が持ち上げられ、ゆっくりと目の前を見据える
射るような鋭い視線に、セナは蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなった
「もう、全部聞き飽きた」
「…えっ」
「お前はどうしたって俺から逃げようとするだろう」
例え心臓を奪われようとも、ローの目の前から姿を消そうとしている
命を天秤にかけても彼女は彼女自身が傷付くことを何より恐れていた
「そんなこと、ッ」
「例えこの心臓を俺に繋ぎ止めたとしても、お前は決して囚われてはくれない」
ローだって心臓を差し出す意味の重さが分からないわけではない
けれどセナという女の前では、命など何の拘束力もないと知っている
「俺が欲しいのは命でもない、だからお前を殺したりはしない。心臓を握り潰してしまえば、簡単に手に入るようなら苦労したりしねェよ」
どこか自嘲気味に憂いを帯びた表情で、ローは微かに肩を竦めた
「お前の言うように、許すことなど出来ず嫌いになれるのなら。二度と関わることなく終えられるなら…どんなに楽だったろうな」
「…どういう、こと?」
それではまるで、ローの中では楽にいかない考えが及んでいるということになる
導き出された答えは自分に都合よく解釈しすぎだろうか
「相変わらず、鈍すぎなんだよ」
「だっ、だって…分かんない、もん…」
互いを知ったのは幼い頃で、再会するまで想い合ってはいたものの実際にこうして深く関係を持ってまだ数ヶ月も経っていない
ローはよくセナを分かりやすいと言うけれど、逆にセナはローのことが分からなくなるときがある
彼は言葉にするのが苦手な方だとは知っているけれど、言葉にしてもらわなければ伝わらないこともたくさんあるのだ
「お前は言葉にしても逃げるときあるけどな」
「!な…ッ」
だからどうして、此方の思っていることはこんなにも易々と読み取られてしまうのか
セナだって、ローの考えることを先読みしていないわけではないのに…いつも的外れだと一蹴されてしまうことばかりだった
「言葉なんて曖昧なモン、信用ならねェ」
「そんなこと、」
「俺が欲しいのはお前の命でも、曖昧な言葉でもない。…どうすればお前の心が手に入る?」