生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第19章 お前を許さない
『良かったですね、セナさん』
愛する人の側にいる事を選んだ彼女は、今は痛々しい姿ながら幸せそうに笑っている
恋人に、仲間たちに守られて…セナの在るべき場所は、確かにそこに存在していた
「たしぎさん!」
出会ってから初めて見る笑顔でセナがたしぎを振り向く
花が綻ぶように柔らかな笑みを浮かべた表情に、何故だか胸が熱くなった気がした
「色々と…ありがとうございました!」
「そんな!私は何も…できませんでした」
頭を下げたセナを目の前に、たしぎが静かに拳を握り締める
1人傷ついてゆく彼女を救えなかった
連れ去られてゆく姿を助けだせなかった
私は彼女を今のような本当の笑顔には、出来なかった
「セナさん頭を上げてください」
「たしぎさん…?」
「素敵なお仲間が、助けに来て下さって…本当に良かったです」
たしぎは笑みを浮かべながら、どうしてか胸が苦しかった
喜ばしいことなのに、何故だか無性に泣きたくなる
自分の無力さを痛感して、今すぐこの場から逃げ出したかった
「言い忘れていたことがある」
「…え?」
何かに耐えるように、微かに身体を震わせていたたしぎを見下ろすような視線と影が差す
それが誰かを確認する前に、セナが不思議そうに近付いてきた人物の名を呼んだ
「ロー?」
「俺がセナの元へと急げたのは、アンタが機転を利かせたからだったな」
セナが連れ去られた地下室を見つけたとき、ローたちの周囲は学院の生徒たちに取り囲まれている状況だった
例え一部分を踏破しようとも、次から次へと湧いて出てくる人影に足止めを食らって正直苛立ちが募るばかり
背後を取られまいと、ひとまずスモーカー、たしぎと背中合わせになる
しかし敵の標的はあくまでローとスモーカーであり、この学院の生徒であるたしぎは彼らの人質だと認識されていた
「私に、考えがあります」
顔も見えない背中合わせの状況で、たしぎは最低限の声量で簡潔にこれからの作戦を2人に伝える
人質と勘違いされている今だからこそ、通用する作戦
「ホワイトアウト!」
スモーカーが能力を発動させると、辺りは白煙に包まれ敵はパニックに陥った
「助けてください!」
パニックに乗じて、本来森へ繋がるべき進行方向とは逆に移動するたしぎ