生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第19章 お前を許さない
「何の用だ」
「よく此処が分かりましたね」
学院の中でもほんの限られた人間しか知らない、秘密の地下研究室
スミレ自身、今回の計画に加担することになるまでその存在すら知らなかった
「あの子のことが、そんなに大事?」
スミレが一度だけ言葉を交わしたセナは、ごく一般的で特に魅力的な何かがあったようには感じなかったし、よく言えば普通…言い方を変えればなんの取り柄も無いような人間だと思っている
わざわざ生徒会長であり容姿も頭脳にも恵まれているローが、無謀すぎる計画で危険を顧みず敵地に乗り込んでまで、取り戻すほどの価値が彼女にあるとは思えない
「ああ、大事だ」
「ッ、それじゃあ…私が貴方に愛されなくて、あの子が貴方に愛される理由はなに?」
容姿も頭脳も、家柄にも恵まれたスミレ
幼い頃から大抵の欲しいと思うものは何でも手に入れてきた
そんな恵まれた環境の中でも、中学生の頃にどうしても手に入らなかったものがある
それが、ロー自身とローの心だ
どれだけスミレから求めて幾度と身体を繋げようとも、ローは特定の相手を決めようとはしなかった
それでも会う回数を重ねれば、多少なりとも自分は他と違い特別な存在になれていると錯覚してしまう
それが彼の望む付き合いの形なら、複数のうちの1人でも、そんな中の特別があれば構わないと諦められたのに
高校生になって、他にもローと関係があった女たちの間では、突然一切の連絡が取れなくなったと密かな騒ぎになる
勿論その中にはスミレも含まれていて、どうにか自分だけ連絡を取ろうと色々試みたけれど、どんな手を尽くしても彼は自分にも誰の元にも戻って来ることはなかった
そんな矢先、三年生になって突然耳に入った噂にスミレは愕然とする
決して特定した相手を作らなかったローの、寵愛を一身に受ける生徒が現れたというのだ
「私があの子に劣るはずがないのに!」
例えば有名女学院で学園長を務める、女帝のような絶世の美女が相手だったならば、スミレも諦められたかもしれない
「…確かにな。セナは秀でて特別じゃない」
「ッなら!」
「だからといって、あいつはお前みたいに人を優劣で判断したりしねェ」
「それは貴方が知らないだけかもしれな「ならお前があいつの何を知ってる」
これ以上のやり取りは無駄だというように言い切れば、ローはスミレに背を向けた