生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第19章 お前を許さない
「え…?」
情けない男の声で助けを求められた直後、聞き覚えのある声がした
まさかそんなはずは、と声のした方に首を向けてみる
「う、そ…でしょ」
そこには信じられない光景が広がっていた
床に転がっている無数の肉片に囲まれて、手にしている生首に刃を向けた男が1人いる
髪を掴まれて宙吊り状態の生首は、よくよく見れば今セナを抱えたままの身体の頭部だった
そしてその生首に刃の切っ先を押し付け、今すぐ細切れにでもしてしまいそうなのは
「なん、で…ローが此処に?」
海楼学園の生徒会長であり、セナの恋人であるトラファルガー・ロー、その男だった
状況が飲み込めず、セナは半ば混乱したように視線を彷徨わせる
「…なんで、だと?」
「え?」
少しだけ久しぶりに聞いたローの声が、今までに聞いたことのないくらい地を這うような低い声をしていた
愛用の帽子を目深に被っているため、その表情は伺えない
しかし一瞬だけ向けられた視線は、射るように鋭くそして冷たいものだった気がした
ローは携えていた生首を、肉片の海に落とし一歩を踏み出すとゆっくりセナの方へと近付いてくる
一歩一歩と距離が縮まる度に、部屋全体を包み込むピリピリとした空気感が彼女にはより強く伝わっているはずだ
そしてちょうど触れられるくらいの距離に辿り着くと足を止める
視線を落とせば目も逸らせない距離であられもない姿のままのセナが、困惑の表情を浮かべていた
だからローは会って一番言いたかった言葉だけを口にする
「俺は…お前を許さねェ」
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遡ること30分ほど前
ローは1人森の奥に辿り着くと、開けた訓練場へ足を踏み入れた
一見なんの変哲も無い実践訓練場のようだが、確かにこの地下には隠し部屋があることは分かっている
そしてそこにはセナが居ることも
しかし巧妙に隠された出入り口だけが、どうしても分からず二の足を踏んでいた
そもそも簡単に見つけられるとは思っていなかったけれど、それにしても手掛かりが少なすぎる
苛立ちと焦りだけが募り、近くの大木に拳を打ち付けた
「ロー」
自分以外は誰も居ないはずの森に、透き通った女の声が響く
振り返ると、この学院の総生徒会長でありセナと入れ替わりに交換留学してきたスミレが憮然と立ち尽くしていた