生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第18章 忍び寄る陰謀
両親も、幼馴染も
仲間たちも、ローも…
私には、もう誰もいない
細められた瞳からたった一筋、涙が溢れた
「あっ!なんか、ごめんなさい!」
涙の存在に気付いて、セナは慌てて顔を拭う
そして誤魔化すように、精一杯の笑顔を浮かべた
「…セナさん」
「皆さんごめんなさい、なんか暗くなっちゃいましたね!」
セナはぺこりと周囲に頭を下げて、先ほどまでと変わらない笑顔に戻る
そのことにクラスの生徒たちは安堵の息を漏らす
しかしたしぎは、人知れず拳を握り締めた
どんなに笑っているセナが、たしぎにはどうしても泣いているようにしか見えなくて
スモーカーと繋がっていた電伝虫を一方的に切ってから、セナには見えない陰が落ちている
たしぎは彼女が背負う陰の理由を知らずにいた。けれどあの後再びスモーカーから直接の連絡を受け、その理由を知ることになる
国に付随するこの学院の陰謀と、連れてこられたセナの背負う残酷で悲しい運命について
大まかに聞いただけでも、胸がひどく締め付けられた
きっとここで、たしぎがセナの味方をすることは学院を、国を敵に回すことになるだろう
そしてそうなることを、彼女が一番望まないのは分かっている
『だけど』
分厚いレンズ越しに、明るく振舞ってクラスメイトの生徒たちと話すセナの姿を見つめた
たった数時間、彼女の何が分かるのかと言われれば何も分からない
それでもただ分かるのは彼女や彼女を取り巻く人たちは、この先訪れる運命を望んでなどいないということ
もちろんたしぎも、もはやその内に含まれているのだけど…
『どうしたら、いいの』
結局1人では何もできず、無力に感じる自分自身に、たしぎは唇を噛み締めた
『そういやさぁ、セナちゃんって海楼の生徒会長のトラファルガー・ローと付き合ってる聞いてたけど、マジ?』
1人の生徒の言葉に、ハッとたしぎは我にかえる
気付けば周囲を取り巻いていた男子生徒たちは、皆一様にセナの周囲を取り囲み、たしぎは蚊帳の外状態だった
「皆さん、ちょっと!私も入れて下さいっ」
ここからでは輪の中心にいるセナの様子が一切分からない
『ローには、私のことはいいから、スミレさんと幸せになってとお伝えください。それじゃあ』