生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第18章 忍び寄る陰謀
通話状態ではあるのに、何の音も聞こえないことにスモーカーは不審な声を上げた
それに慌てて、セナは何か言おうと口を開く
その時
『オイ、待て白猟屋。この電伝虫…』
セナは耳を疑った。まさか、この電伝虫越しには、スモーカーだけでなく、他にもう1人居るのだ
電伝虫は通話口の相手の姿を真似する特性がある。つまり今向こう側の電伝虫の姿は…きっとセナを模しているに違いない
それに気付いたもう1人の声に、迷わずセナは再び口を開いた
「っ…ロー!」
電伝虫に向かって、叫ぶようにもう1人の名を呼ぶ
『!やっぱり、そこに居るのはセナなんだな?!』
『なんでたしぎの電伝虫にセナが…『貸せ、白猟屋』ってオイ!』
スモーカーとローが通話口でなにやら揉めている。そんな声だけのやり取りでさえ、聞くだけで安心できた
安心出来るはずなのに、セナは素直に喜べない
心の中を巣食うのは取り払うことのできない暗雲
自然とどちらともとれない涙が溢れ出してくる
「セナさん、どうかしましたか?」
「あ…」
「あれ、私の電伝虫…ってなんで泣いてるんですか?!何処か痛みますか?」
荷物を一旦セナのベッドに置いて、慌てて駆け寄ってくるたしぎの声に反応したのは電伝虫越しのスモーカー
『オイ、たしぎ!そこに居るのか?!』
「わっ!スモーカーさん?!」
『お前なんでセナと居る。状況を説明しろ』
「はいっ!えっとですね、私とセナさんは今…」
"バタンッ"
『会長!居ますか?!』
たしぎが話し始めようとした矢先、電伝虫越しに勢いよく扉が開き、新たな人物の声がした
セナにはすぐにその声が、ペンギンだと分かる
『どうした』
『それが…交換留学生として来たっていう人が『ロー!お会いしたかった…!』
ペンギンの声に続いて聞こえた声に、セナは目を見開いた
先ほどから嫌という程耳についた声…スミレの声だ
『ちょっと!アンタ応接間で待ってろって』
『だって一秒でも早くローに会いたくて…あなたもういいわ、下がっても』
『…馴れ馴れしく呼ぶんじゃねェ、誰だ貴様』
『あら、薄情な人…あなたの許嫁でしょう?』
『『許嫁ェ?!』』
大音量でペンギンとスモーカーの声が見事に重なった