生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第18章 忍び寄る陰謀
『今は、セナの側に居てやれ』
スモーカーの視線は、ローにそう訴えていた
ローの背後に隠れてしまったセナは、未だはらはらと涙を流しながら震える自身を掻き抱いて何かに耐えていた
愛する人を殺させようとされて、刺してしまったのは大事な幼馴染
どんな人間にだって、耐え難い事実だ
「…ッセナ、もう大丈夫だ。シャチも、生きて帰る」
この悲劇を生んだのは、目の前にいるドフラミンゴという憎き男
何度その心臓を握り潰そうと、この怒りは消えない
けれど今は、目の前の怒りよりも…セナを落ち着かせてやるのが先決だと
頭に血が昇りきっていたローは、スモーカーの冷静な視線によって、ようやく冷静な思考を取り戻す
震えが止まないセナを囲い込むように抱きしめ、何度も背中を撫で、何度も声を掛けてやる
「ロー…私、わた、し…」
「もう何も言うな。大丈夫だ、お前は何も悪くない」
これ以上愛しい彼女が壊れてしまわないように、キツく抱きしめ続ければ
段々と乱れがちだった呼吸も落ち着き、涙も止まる
悲しみに染まっていた瞳に、ようやく光が戻った
そのことに、ローはホッと胸をなで下ろす
そして前方を見やれば、スモーカーとドフラミンゴが未だ対峙している真っ只中だった
「俺のクラスの生徒が、勝手に交換留学なんざ聞いてねェがなァ?」
「何故学園長であるこのオレが、一教師に確認を取らにゃならん?学園長の意見は教師どもの総意だろう?」
バチバチと火花を散らしそうなほど、睨み合う2人にもはや誰も近づけず
1-Cの生徒たちは、教室の端で震え上がっていた
「セナの交換留学の手続きは既に終わっている。今更テメェらが足掻いたところで、どうしようもねェんだよ」
ニヤリと笑うドフラミンゴが、ツイと廊下を仰ぐと
窓越しにゆらりと人影が見える
「迎えがきたようだ」
ガララッ
「まぁ〜ったく、人使いが荒いよねェ…」
廊下には飄々と間延びした口調で、これまた独特な風貌の男が立っていた
シワだらけの顔に、大きめのサングラスの奥には口調とは真逆の冷ややかな目が見てとれる
カツカツと靴音を鳴らしながら、無遠慮に教室内へと足を踏み入れ
ドフラミンゴと対峙していたスモーカーの前に立ち止まると、覗き込むように間合いを詰める
「スモーカーくん、だったねェ?」