生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第17章 優越感と劣等感【キッド夢】
俺の腕の中で、何も分かっちゃいないセナはきょとんとして
キレのいいトラファルガーは、言葉の意味を理解したのか苦虫を噛み潰したようにひどく苦い顔をしている
「用は済んだなら、さっさと帰るぞ。セナ」
「あっ、ちょっと…ローってば!」
笑うことで力の緩んだ腕の中から、奪い去るようにセナの身体を抱き上げられた
別にムキになって追いかけることはせず
最近よく見かける、セナが横抱きにされた体勢で足早に去って行く後ろ姿を見つめていると
ぴょこんと飛び出た栗毛が此方を向いたと思えば
くるりとした黒い瞳が此方を捉えた
「キッド!」
「あ?」
「また連絡するから!今度は返してよね!」
「…あァ。気を付けて帰れよ」
曲がり角に消えていく2人分の影を最後まで見送って
ようやく立ち上がると背後にまた1人の気配を感じる
「良かったのか、追わなくて」
「…いいんだよ。お前には分かってんだろ、キラー」
わざとらしく声を掛けてくる男に、やれやれと肩を竦めながら振り返った
いつから見ていたのか、少し前に置いてきたはずのキラーが腕を組み廊下の窓際に佇んでいる
「仲直りできたのか?」
「あァ、」
「そうか、なら良かった」
マスクの下の表情は伺えないが、その声音は心底安堵したような柔らかいモノだった
だからテメェは俺の保護者かよ
「帰りに服屋、寄らないとな」
「ハァ?なんでだよ」
「日曜、デートだろ?」
「…オイ」
だからテメェ…いつから盗み聞いてやがったんだよ!怖ェえっつーの!
***
翌日、昼休みに麦わらのトコの男衆が突然教室へとやってきて
有無を言わせずに運び出された先は、1年C組の教室
待ち構えていたのは4日前、烈火のごとく怒りを露わにしてた面々
と、その隣でソワソワしているセナ
さらにその隣には腕を組みこちらを見据えるトラファルガー
「…なんか用かよ」
「用事があるといえば…山ほどあるわね」
「ナミ…!」
ナミと呼ばれた鮮やかなオレンジ頭の女が、何かを堪えるように渋々といった様子で口を開いた
分かってる、テメェらが俺を許せねェことくらい
内心で深い溜息を吐く
「確かに山ほどある…けれど、もういいわ」
「はッ?」
もういい、って何だ…
「セナが許すのに、私たちが許さないなんて。おかしいもの」