生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第17章 優越感と劣等感【キッド夢】
「あのな、俺は一応教師なんだがな」
目の前で体格のいい男が溜息を吐いた
困ったような声音ではあるが、その顔面をすっぽりと覆った覆面のお陰で表情は伺いきれない
「第一、キッドがここ数日の取り締まりを厳しくするから他の風紀委員の手が回らないんだが」
今まで登校時の風紀検査のみで済ませていたはずが、常に腕章を携え休憩時間、下校時、はたまた放課後の校外でまで取り締まりを強化すると
風紀委員長でもある俺が言いだしたのは3日前のこと
その時の委員会議は、俺の機嫌がすこぶる悪く他の委員たちが縮みあがりただただ、提案された強化案に頷くしかできていなかった
「ケッ、今まで甘過ぎたんだよ。ここの風紀委員は」
「それを甘んじていたのは、キッドも同じだろう」
「うるせェな!説教しかできねェんなら、もう戻れ!」
「何をそんなにピリピリしてるんだ。例のトラファルガーの女と何かあったのか?」
キラーは何となく言ったんだろうが、ピクリと眉尻が吊り上がるのを隠せない
「別に何もねェよ」
「確か親友になったんじゃなかったか?最近話を聞かないが」
そうか…あの昼の一件でピリピリし始めた3日前のときまで、俺はキラーに何かと親友だったセナの話を聞かせていたような気がする
それが今はピタリと止んでしまったことを、不思議に思いだしたキラーは、セナが今回のことに関係しているのだと勘付いたのだろう
「ハッ、俺にマジで親友が居ると思ってたのかよ?ダセェ」
思いの外自嘲気味に、口を吐いた言葉にキラーの纏う雰囲気が一瞬揺らいだ
俺らしくもねェとか、思ったんだろうな
すると、急になにを思い立ったのかキラーは手にしていた書類を纏めて置きわざとらしくポンと手を打った
「キッド」
「あぁ?」
「急用を思い出した。後は頼めるか」
「…ッチ、仕方ねェな」
あまりにもわざとらしい演技だったもんで、一瞬突っ込んでやろうかと思ったが、上手く言いくるめられるのがオチだとしぶしぶ書類の束を乱暴に引き寄せる
そして颯爽と踵を返して、風紀委員室を出ようとするキラーの背中に一つだけ釘を刺しておく
「おいキラー」
「なんだ?」
「余計なこと、すんじゃねェぞ」
「ああ、任せておけ」
バタンと閉まった扉を見て、ガクリと項垂れた
あいつ明らかにセナの所に行く気だろ…保護者気取りはマジで勘弁してくれ