生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第5章 自己紹介はマニアックなくらいがいい
「あの、」
「そこを退け、後ろの2人に用がある」
俺と対峙するセナの後ろで震える2人が心底羨ましいと思う。俺は自分の嫉妬深さに驚くばかりだ
先ほど目の前で繰り広げられた何気ないやり取りが、俺の心臓を鷲掴みにして離さない
シャチとペンギンの名前を易々と呼ぶことに理解は出来る
そして俺の名前を呼ぶのには躊躇い、呼び続けることを渋ったのも…照れているのだと、可愛いと思っていた
麦わら屋の名前を易々と呼んで、あまつさえ笑顔を向けた瞬間を見るまでは
「退け」
「…退きません。あの、2人も悪気があるわけじゃないので…」
「お前には関係ない」
「そんな言い方しなくても」
「…なんなんだ」
俺の気も知らないくせに。俺のこの苦しみの原因も、取り払えるのもセナだけだ、本人は気付いていないだろうが
気付かないのなら、これ以上俺を苦しめないでくれ
「私からも、謝るから…許してあげて?…ロー」
「ッ」
覗き込むように、俺を見ていたセナの唇が俺を呼ぶ
その顔を見ると、火がついたように真っ赤すぎて思わず笑いが漏れた
「フッ、死にそうなくらい真っ赤だな」
「死にたいくらい恥ずかしいからね」
「麦わら屋のことは平然と呼んでいたのにか?」
「それは…ルフィはローと違うもん」
「なんだそれ…」
俺は恥ずかしくて、麦わら屋は恥ずかしくないと言いたいらしい
緩んだ胸の締め付けが、じわじわと再び締め付けようとする
「自信たっぷりの強引なローが好きなんです。私はローの手を取ったのだから信じて?」
セナが俺の手を取り、真っ直ぐに見上げてくる
「…此処では名前で呼べ、そして敬語は使うな」
「はい、じゃないや、うん」
「他のヤツにむやみに触られるな、そして俺の側を離れるな」
「それは…できる限り、としか答えられないかな」
俺の勝手な言い分に、一生懸命考えながら応えようとしてくれる姿に胸がスッと軽くなる
ハッキリした言葉で答えられなくても、苛立ちは不思議と起こらなかった。それはセナが真剣に考えて導き出した答えだということ、そして俺を見つめる瞳に俺が映っていることが何より俺に安心感を与えたからか
「セナ…俺がとことん愛してやる、他所なんか見る暇がないくらいにな。そして必ず守ってやる」
「ふふ、ありがとう」
セナが柔らかく笑う