第16章 初めての…(＊)

「んぅ…っ」
「はぁっ、ったく面倒くせェな」

深い口付けから唇を離して、ローがぼそりと呟く
至近距離では些細な呟きでも、耳に届いてしまう

「ごめん、なさい」
「どうしてくれる」
「えっと…」

「面倒くせェのに、セナ以外考えられねェんだよ」
「…え？」
「どんなに面倒だろうが。手離すつもりはねェ…お前以上に面倒になった俺を、どうしてくれるつもりだ」

セナのことになると一喜一憂して仕方ない
疑われる怒りも胸を締め付ける痛みも…セナ相手でなければ起こり得ないのだ
だから昔のように簡単に手離せれば、どれだけ楽だろうか

けれど止まない愛情も、止めどない欲情も…これもまたセナにしか湧き上がらない

面倒だと分かっているのに、目の前の存在を手離す選択肢など考えられなくなっている

「私以上に…？」
「ああ」

不思議そうに目を丸くして首を傾げているセナに強く頷くと、再び瞳から涙が溢れ出す

「何故泣く」
「だって…私、本当に面倒だなぁって」

例え"過去"に女を口説いていようが
"今"ローが口説いているのはセナなのだ

その事実に何を恐れることがあったのだろう
今こうして身体を重ねて、その瞳に映るのも自分だけだというのに

「やっと分かったか」
「うん…っ、アッ」

腰を掴んで、ワザと体重が掛かるように腰を引きつける
すぐに潤いを帯びた秘所からは、動くたびに濡れた水音を響かせた

「あっ、まっ…待っ、て」
「散々待っただろうが、もう待てねェ」
「んぁ、ッはげし……ァッ、アッ」

下から突き上げるような腰の動きに、ビクンビクンと細い身体が跳ねる
強く感じる場所に先端を当てがい、断続的に刺激を与えられれば悲鳴に似た嬌声を上げそうになり慌ててローの肩口に唇を押し当てた

横目に見下ろしてくるローが嬉しそうな顔をしているのを、恨めしげに見上げながら必死に快楽に堪える

「今更だろ」
「あっ、や…だ、めぇ…んぅっ」

肩を掴んで肩口から引き剥がすと、顔を真っ赤にして睨みつけてくるセナの唇を食む
ローはキスをしたまま、セナ越しに見える枕元の時計を確認した

「っはぁ」
「セナ、」

角度を変えて再び唇を食まれると思っていたら、真剣な声音で名を呼ばれると

「誕生日おめでとう、セナ」