生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第16章 初めての…(*)
「あ、そうそう。ローはね、昔お母さんたちを助けてくれた"お兄ちゃん"なんだよ。2人ともお礼言ってよね」
「セナの言うお兄ちゃん…って、あの珀鉛を取り除いてくれた…?」
「あの"お兄ちゃん"か?!」
いつのことか、なんのことかと認識した両親は覗き込むように立ち上がり、その視線が一気にローに集まる
注目を浴びた居たたまれなさにローは進めていた箸を止めた
「お元気そうで、何よりです」
「ッ…君のお陰で、俺たち家族は生きてるんだ!」
「あの時は本当にありがとう、私たち家族を助けてくれて!」
「いや、俺は…「ロー」
セナは助けられていないという言葉を言いかけて、セナに言葉を遮られた
その声音に振り向けば、小さく首を振って口を噤んでいる
そこで思い出した、彼女は彼女の中の珀鉛も取り除かれたと両親に"優しい嘘"を吐いていたことを
本当にこの家族を想うのなら、この事実は伝えるべきなのだろうが
「ロー、お願い」
「……ハァ」
必死に懇願するような視線で、ローを見上げるセナ
その縋るような瞳に思わず小さく溜息を漏らすことしか出来なかった
「3人とも、珀鉛病らしき症状も出てないようで良かったです。万が一ということもあったので」
「大丈夫だよ。ピンピンしてる!この通り、セナも高校生になった」
大きくなった娘を見る父親の瞳に、キラリと涙が光る
これでは到底事実を言えるはずもなかった
「でもまさか、再会できるなんて…しかも、娘の恋人として!これって何か運命かしら?」
「これは僕たちの出会いのように運命だよ!母さん!」
「なんでお母さんが顔を赤らめるの?!お父さんも何言ってるの?!ちょっともう!いい加減2人とも座ってよ!」
テーブルに身を乗り出したまま、今度は運命だ愛だとキャーキャーはしゃぎだした両親に顔を真っ赤にして宥めようとするセナ
『運命、か』
そんな3人の家族を見つめながら、ローは心の中で確固たる決意を秘めていた
これから先、セナの運命と共に歩む決意を新たに
今夜、セナの自室で静かにオペは執刀されようとしている
そしてこれから毎年行われるオペは、永遠ともいえる2人だけの秘密
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「お待たせ」
「ああ、両親はもう寝たのか?」
「うん、ぐっすり。2人ともお酒弱いから」