生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第16章 初めての…(*)
ローの顔が一瞬険しくなる
幼い時のことを、思い出したのかもしれない
「ちゃんと、此処に…ローの側に居るから」
まるで子どもに言い聞かせるように、背中を撫でながら身体を寄り添わせた
「だから泣かないで」
「…泣いてねェんだが」
「あの時のローは、泣いてくれたでしょう?」
目の前から姿を消してしまった、助けられなかった少女を想い
幼い日にひっそりと泣いたのは、あの日の星空しか知らない秘密
「私はちゃんと此処にいるよ。だからもう、泣かないで」
「……」
胸の奥にツキンと、鈍い痛みが広がった気がした
一度だって忘れたことなどない、幼い記憶は後悔の念に支配され、無力な自分はあの場所で立ち止まったまま
『手を差し伸べられたのは、俺の方か』
決して涙など流してなければ、流れもしないけれど
確かにあの時の自分は未だに涙を流していたかもしれない
そして今確かに、柔らかな笑顔と温もりによって救われた
「ガキ扱いしてんじゃねェ」
「ふふ、ごめんね?」
「…フッ」
星空を閉じ込めたようなキラキラとした瞳に、再び映る己の姿が心底安心した顔をしていて小さく笑みが漏れる
「なぁに?」
「なんでもねェよ」
「ん、」
ふわふわの栗色した髪を優しく撫で付けながら、身体を少し離すと唇を奪う
小さく吐息を漏らすと、抵抗することなく口付けを受け入れた
「ン、んっ」
「ッハ、ァ」
「ふ、ぅンンッ」
角度を変えて、舌を絡ませ吸い上げるとくぐもった嬌声が漏れる
ゆっくり唇を離せば、名残惜しげに銀色の糸が紡ぐ
どうやらキスだけで力が抜けてしまったセナは、支えられる腕に身を委ねた
「も、いきなり…なんだから」
息苦しさからか肩で息をしながら、薄っすら涙を浮かべて腕の中でぐったりしつつ睨んでくる
「消毒だ」
「…覚えてたの」
「忘れるワケねェだろ」
昼間セナがドフラミンゴと出会った時、無理矢理口付けされた挙句
さらにセナから口付けをするように強要されたと聞いた
その時全てを清め、消し去ってやりたいと思っていたのだが
その後も色々と事が起こりすぎて、結局タイミングが今まで先延ばしになってしまった
「私忘れてたんだけど」
「お前……危機感なさすぎだろ」
「だって!ロー以外の人と…なんて、忘れたいよ」
実際に忘れたいと思っていたからこそなのかもしれないが