生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第16章 初めての…(*)
『いらっしゃーい!』
項垂れながら帰って行くベポの後ろ姿を見送ったあと、玄関のドアを開けると待ってましたとばかりにセナの母親が出迎えた
「お母さん…なにそれ」
「え?可愛いでしょ?セナのもあるのよ!」
「いらないっ!」
ローが来ることに気合を入れたのか、フリフリのエプロンを身に付けている
クルリとその場で一周してみると、思い出したようにもう一枚同じエプロンを取り出した
「大丈夫、絶対可愛いわよ!ね、ローくん!」
「は、いや…そうですね。お母さんもお似合いです」
「まぁ…!やだイケメンにお似合いって言われちゃった!どうしようセナ!」
「どうもしなくていい!」
「ククッ」
浮かれる母親に顔を真っ赤にして怒鳴り散らすセナに、思わずローが笑いを零した
いつもどちらかといえば天然を発揮するセナが、家では意外としっかりしているのは先日知ったばかりだ
幼馴染である2人以外、学園の仲間内では自分しか知らないであろう姿
それが堪らなく優越感と、独占欲を満たしてくれる
しかし笑ったことがセナには不服だったようで
「ほら、ローに笑われたじゃない」
唇を少し尖らせてふて腐れたように母親に抗議の声を漏らす。しかし
「笑った顔もステキね♪」
「………もういい」
母親の見当違いな返しに、もはや突っ込む気も失せたようだ
一歩後ろで母娘のやり取りを見守っていたローはまるで学園でのセナと自分のようであると、また密かに内心笑みを零した
「ロー、部屋行こ?」
「、ああ」
いつの間にか此方を振り向いたセナが、こちらを見上げて制服の裾を引っ張っている
意識を現実に戻し、手を引かれる形で慣れた階段を上りセナの自室へと足を向けた
部屋に入り、後ろ手に扉を閉めると半歩前の小柄な体を引き寄せ腕の中に収める
「?ロー?」
腕の中でモゾモゾと体勢を変えると、不思議そうにローを見上げた
いきなり、どうしたのだろうかと首を傾げる
「どうかしたの?」
「別にどうもしてねェ」
低い位置にある肩口に顔を埋めたローが、後頭部に手を添えて自らに押し付けるよう強く腕に力を込めた
その行動に込められた気持ちに応えるようにそっと背中に手を回す
「私、此処にいるよ?」
「ああ、分かってる」
「もう逃げたりしないから」