生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第16章 初めての…(*)
「き、ききき聞いてない!」
「今話しただろう。あと、今夜はお前の家に泊まる」
「?!勝手に決めないでよ!」
「?お前の両親の許可は既にもらっているが」
「………」
どうやら書庫に引っ込んでいたのは、こっそりセナの親に連絡を取っていたようだ
ローは先日の休みの一件で両親(特に母親)に、かなり好印象となっているため泊まることも即刻OKが貰えたらしい
「わたし、さっきのみんなみたいになるの?」
先ほどの光景を脳裏に浮かべているのか、不安そうな声音で恐る恐る問いかけた
実際に一度バラバラになっていた3人は、目の前でピンピンしているのだから
そんなに恐れることはないのかもしれない
それでも人として、まして年頃の乙女として…好きな人に切り刻まれるというのはいい気分とはいえないだろう
「やだ…」
「安心しろ、痛みはない」
「そういう問題じゃなくて!…人としての尊厳とか、乙女心として…」
「言っておくが」
「私に拒否権はない、でしょ?…もぉ」
がっくりと肩を落としてはみたが、本当はローに感謝しきれないほど感謝している
過去に何度か、珀鉛の除去手術をしてくれる医者を探していたが
皆一様に、珀鉛と聞くだけで震え上がり腫れ物に触るようにしながら遠ざかっていった
『伝染るぞ!みんな逃げろ!』
『発症しないわけないのよ!見えないところに白い痕があるかもしれない!騙されないわよ!』
まだ幼いセナには、心に深く突き刺さる辛辣な言葉と態度
しかし、彼女は決して泣いたりせず
寧ろ自分以上に傷付けられたような両親を慰めていた
それは、まだ幼く状況を分かっていなかっただけかもしれない
けれどその時セナは、どこか心穏やかだった
両親の珀鉛は既に除去されている
とある町で知り合った、名も知らぬ少年の手によって
彼は自分の命と引き換えにセナの珀鉛を取り除こうとまでしてくれた
けれど自分は運が良いのか悪いのか…その体内に珀鉛を持ちながら、珀鉛病は発症していないのだ
ならば心優しい少年の命まで奪う選択など考えられるわけがない
自分たちを助けてくれたように、彼を助けたいと幼心に芽生えた感情を何と呼ぼう
その時幼すぎた少女にも、そして少年にも心に咲いた温かな花の名をその時は知らぬまま
少女は静かに別れを選ぶ
二度と会えないと、分かっていながら