生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第16章 初めての…(*)
「…そうなの?」
「…さあな」
ナミの言葉に目を見開いたセナが、ゆっくりとローを振り返ると帽子を被りなおして顔を背けられる
唯一見えた唇は、やはり少しへの字のように見えた
「ご、ごめんね」
「べつに」
「祝って欲しいみたいになっちゃうから、恥ずかしくてその…」
「誕生日ってのは祝うモンじゃねェのか」
「う、それはそうだけど…」
セナが言いたい意味を分かってはいるが、どうにも腹の虫がおさまらなくて、ローは少しだけ意地悪を言ってしまう
すると黙ってしまったセナ。どうしたのかと視線を戻せば、俯きがちに顔を隠す前髪の隙間からポロポロと光るものが落ちていく
「ごめん、って、ば」
「ッおい、泣く「私はローが全部初めてでっ、何も分からない…どうしたら嫌われないのか、未だに不安で不安で…ッ」
上げられた顔はキッと睨むようにローを見上げた
しかしその瞳からは止めどなく涙が溢れ続けている
目の前の彼女は確かに怒っているようなのに、その表情は儚く悲しげに思えて胸が締め付けられ、ローはグッと唇を噛みしめた
『俺は』
自分の手が濡れてしまうことも構わず、そっと涙で濡れる頰を両手で包み込む
そしてごく当たり前のように、次から次へと涙の溢れる目尻に唇を寄せた
「っん」
「お前を泣かせてばかりだな、情けねェ」
「そんな、ローは情けなくなんか…」
ふるふると、固定された頭を小さく小さく振って否定する
少しだけ涙がおさまると頰に添えられている手に、自分の手を重ね眉を下げてローを見遣る
「情けないのは。私だよ」
「…」
「自分のことばっかで。ローの気持ち、考えてなかった」
大きな手のひらにスリと擦り寄ると、目を細めて薄く自嘲気味に笑みをこぼす
「いいんじゃねェのか」
「…え?」
「不安になるってことは、それだけ俺の事を考えてる証拠だろう。違うか?」
「それは、そうかもしれないけど」
「いくらでも言ってやるさ。不安なら、たとえお前が不安じゃなくなっても…お前は俺のモノだと」
自信と余裕たっぷりに、ローは口角をつり上げニヤリと笑った
その瞳には強い意志が宿り、セナを捕らえて離さない
「ありがとう…私の誕生日、祝ってくれる?」
「当たり前だろう。拒否権なんざねェから、覚悟しろよ」
「うんっ」
セナが頷くと、突然拍手が沸き起こった