生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第13章 自由を求める男
けれどその事実をローは隠した
無理をしてでも、この少女を助けたいと強く想ったから
1日目に少女の父親のオペをした
2日目には少女の母親のオペをした後、少女自身のオペを行うはずだったのだが
何故か少女は現れなかった
それどころか、その日の晩には少女たち家族はその街を去っていたのだ
決して忘れていたわけではない、ただ
「あいつが…セナだったっていうのか」
幼い頃の記憶だったのと、身を隠すような姿に特徴など一切目に映っていなかった
しかし何故、そのことをドフラミンゴが知っているのか
“お前、あのガキが死んでもいいのか?”
“え…?”
「俺が忠告してやったんだよ」
“お前のオペを決行すれば、あのガキは命を失いかねない”
小さな少女の胸に
“自分の死”と“彼の死”が天秤にかけられる
“その身体に眠る珀鉛は、まだ症状を発症しちゃいねェ…ここで、他人の命を自らにかけるか?”
少女には少し難しい言葉だった
けれど、雰囲気でなんとなく理解できる
“私にオペをしなければ、お兄ちゃんは死なないの?”
“ああ、そうだ。けれどお前は、いつか死ぬかもしれねェなァ”
現状で発症していないのだ、きっとこの先も発症する確率は低い
しかしいつか、その情報を国が手に入れれば
確実に実験体として、そして珀鉛の入れ物として
国に飼い殺される運命となる
そんなこと、目の前の少女には分かるはずもない
“お兄ちゃんが死なないなら、私は珀鉛病で死んでもいいよ”
“珀鉛病じゃなけりゃ、どうする”
“…よく分からないけど。お父さんやお母さん、シャチやペンギンが元気でいられるなら。私は大丈夫”
本当によく分かっていないのか、分かった上で言っているのか
少女はニコニコと笑いながら、簡単に自らの死を選んだ
この少女は今まで、どれだけの自己犠牲を払ってきたのだろうか
何故かドフラミンゴは胸が締め付けられる気がして、胸に手を当て首を傾げた
それを苛立ちと感じ、急にうっとおしげに声を荒げる
“ガキには俺が伝えといてやる。お前はとっとと此処から消えろ”
“おじさん?どうしたの?”
“誰がおじさんだァ?…いいから、さっさと消えろ”
そうして少女は、両親に初めて嘘を吐いた
自分の身体から、無事に珀鉛は取り除かれたと
「俺はテメェの為を想って言ってやったんだぜ?ロー」