生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第13章 自由を求める男
「セナに、珀鉛…?」
体内に珀鉛が蓄積されているのなら、ほぼ100%の確率で中毒症である珀鉛病を発症するはずだ
しかしセナの身体の何処にも、珀鉛病独特の白い跡は見当たらなかった
それならば、ただ単に珀鉛が体内にはないだけではないのか
「あいつはフレバンスの生まれじゃねェはずだ」
シャチとペンギンと、生まれた時から一緒だと言っていた
彼らは確かに北の海の出身だが、フレバンスとは離れた地域だったはず
「何もフレバンスの生まれじゃなくても、いくらでも可能性はあるんじゃねェか?」
「どういう…」
「可哀想になァ…セナはお前を想って、その身体の珀鉛を取り除くのを辞めたってのによォ」
「何を言っている…?」
セナと出会ったのは、数日前が初めてのはず
それ以前に、出会ったことなどない
「薄情な男だなァ?ロー。覚えてねェのか、お前に一度助けを求めたガキを」
「…!」
“お兄ちゃん、珀鉛病なの?!私も体の中に珀鉛があるの…珀鉛病は発症してないんだけど”
焼け野原となったフレバンスを出て、今の家に落ち着くまでの間
珀鉛病の手がかりを求めて、立ち寄った病院で出会った
ふかふかの白い帽子をいつも目深に被っていた一人の少女
朧げな記憶は顔まで思い出せない
たった一か月、父親の仕事の関係でさらに幼い頃フレバンスに滞在していたという少女は
その時に採掘場へ出向く母親におぶられていたため、多くの珀鉛を吸い込んでいたらしい
“みんながね、うつるから近付かないでって石を投げるの”
震える手には、身を庇った際についたのか痛々しい傷跡がいくつも付いていた
しかしこの病院にはなんの手掛かりもなく、少女たち家族は2日後にこの街を出るという
ローは自分の秘密を彼女に打ち明けた
数日前にコラソンの協力によって、オペオペの実の能力者となっていたこと
自分自身の珀鉛を取り除き、家族全員にも“オペ”を施したと
“珀鉛病が治せるって本当…?私のお父さんとお母さんも、珀鉛病なの!私も、いつ発症するか分からないって…”
ローの話しに希望の光を秘めた瞳は、冬の夜空のようにキラキラと輝いて綺麗だったのを思い出す
しかしローの能力には体力が必要なため、まだ幼い身体には一日に一度のオペが限界
あと二日しか滞在しないとなると、その間に3人の人間のオペは難しくなる