生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第12章 ちょっと一息つきましょう(*)
「…チッ」
「ふふふ」
妹の名前を出されてしまえば、仕方なく腕の力を緩めて身体を少し離した
見上げてくる顔が、楽しそうに笑っている
「私も一緒に出るから」
「?何処行く気だ」
「夕飯の買い物だよ。ローが泊まってくれるなら、腕によりをかけなきゃ」
「待て、俺も行く」
「えっいいよいいよ!近所のスーパーだし」
あくまでもローは客人なのだ、付き合わせるわけにはいかないと首を振る
しかし一度決めたことは、簡単に曲げないのも彼なのだ
「すぐに戻る、だから待ってろ。分かったな」
「あー、うーん……分かった」
渋々、彼の意見に折れることにした
ここで機嫌を損ねさせるのは賢明ではない
「絶対だぞ」
「ちゃんと待ってるから、早く行ってあげて?」
ラミの連絡があってから、だいぶ時間が過ぎているはず
これ以上待たせるのは可哀想だ
セナは背伸びをしてローに腕を伸ばすと無理矢理屈ませた
チュッ
頰に小さなリップノイズを立てて口付ければ、唖然としている彼にもう一押し
「いってらっしゃい、早く帰って来てね」
「…行ってくる」
ローは満足したように笑うと、玄関を出ていく
すぐに駆け出したのだろう、足音が颯爽と遠ざかって行った
「さて、ちょっと片付けようかな」
買い物に行けないとなると、急に泊まることになったローに見られても恥ずかしくないように家の中を片付けておこう
別段散らかっているわけではないが、それくらいしかやることがない
なので普段彼が入ることのない、自室以外を簡単に掃除することにした
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ガチャリ
「…」
セナの自宅の玄関を開けて、ローは思わず言葉に詰まった
この場合なんと言えばいいのだろうか
送り出してくれたセナの言葉に返すとすれば"ただいま"
しかし普通他人の家に足を踏み入れる時は"お邪魔します"
そんなどうでもいいことで悩んでいると、家の奥から足音が近づいてくる
洗濯物のカゴらしきものを抱えて、セナがローに気付いた
「あれ、早かったね。ラミちゃんに会えた?」
「遅いと文句を言われてきた」
「あはは、お兄ちゃんも妹には弱いんだね?」
「うるせェ」
図星なのか照れ臭そうに帽子を目深に被ったローにクスリと笑みを漏らす
普段見れないであろう顔が見てみたくて、声を掛ける
「おかえりなさい、ロー」