生徒会室は寵愛の鳥籠(ONE PIECE長編学園パロ)
第3章 狙った獲物は逃がさない
ーローsideー
舞い散る桜吹雪の中で佇む小さな人影に、声をかけたのは思わずのこと
直感的に放っておいてはいけない、と言い知れぬ焦燥感を覚える
声を掛けるとビクリと肩を揺らし、恐る恐る此方を振り向いた姿を捉えたと同時にひどく心が掻き乱された
短い栗色の髪は柔らかい風に遊ぶ
黒目がちの大きな瞳は、溜め込んだ涙を流すまいと必死に堪えて潤んでいる
薄い唇は同じく堪えるようにキツく結ばれていたのだろうが、俺の存在を認識したことで驚きに半開きにされたようだった
服装をよく見ると、どうやら新入生らしい。だが入学式は現在進行形で執り行われているはず
「…新入生か。こんなところで何してんだ、入学式ならとっくに始まってるが?」
「あ、はは…ちょっと……遅刻しちゃいまして」
女は泣きそうな顔をして笑う。見ず知らずの男に馬鹿正直に話して…危なっかしいやつだ
そんなことを思いながら、気付けば女の腕を引き自分の胸に押し付けてあやすように背中を撫でる
「俺はお前の事を知らねェ、それと…何も見えてねェよ」
まるで、ここで泣けと言うような自分の台詞に驚いたのは他でもない俺自身
しかし腕の中で小さく震えだした華奢な身体を、これから離す気は毛頭ないのも事実…勿論現状の物理的な意味だけではなく
俺は腕の中にいる名も知らぬ一人の女をひどく欲しているようだ
例えばこの状況で、この女を抱き締めているのが他の男だったらと思うと…勝手に思うだけなのに、胸糞悪ィ
先ほども思ったが、この女は無防備で隙があり過ぎるように感じる。例え俺でなくても、馬鹿正直に答えこうして胸を借りるのではないか…
またも自分の至った考えに、自分自身で苛立ちを感じてしまった。内心で盛大に舌打ちをする
ならば四六時中、俺の側に置いておけばいい話だ。離れられないように、縛りつけてしまえばいい。心も身体も
そんなことを考えていた矢先、いつの間に落ち着いたのか女は窺うように顔を上げている
そして人の顔を見るなり思い切り距離を取りやがった
「ああああの、ごめんなさいありがとうございますスミマセン…!」
屈伸すんのか、ってくらい頭を下げて謝る姿がバカみたいに可愛らしいと思うくらい心を奪われているようだ
しかし先ほどまでか弱そうに泣いていたとは思えぬくらいの切り替えように思わず笑いが漏れた