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【テニプリ】俺なしでは生きられなくなればいい【木手】

第1章 俺なしでは生きられなくなればいい


ダンボールが崩れた時に、派手な音を立ててくれたおかげで、私が下敷きになっている時間はそう長くは無かった。
音に気が付いた永四郎が救出しに来てくれたのだった。

「大丈夫ですか?!美鈴!」
「う、うん……。大丈夫……」

血相を変えて駆け寄って来る永四郎を見て、嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが一緒くたになってこみ上げてきた。
彼の役に立ちたくて、褒めてもらいたくて、自分からやると言い出したのに、私は何をやっているんだろう。
まだ部活中だっただろうに、それを中断させて、本当に、何をやっているんだろう。
そう思うと助け出されている自分がとても情けなく思えてきて、ぽろりと涙がこぼれてしまった。
その涙を見て、永四郎が焦ったような声音で私に言う。

「どこか痛めたのではないですか?ちょっと見せなさい」
「ううん、違う、怪我は大したことない……そうじゃなくって、」

擦れてうっすらと赤く血が滲む肘を見て、永四郎はそっと私の手首を掴んだ。
永四郎の眉間がぎゅっと寄せられて、そこに出来た皺が深くなっていくのを見ながら、私は唇を噛みしめた。

「迷惑かけてごめんなさい……」

泣いたってどうしようもないと分かっているのに、ぽろぽろとこぼれる涙は止められなかった。
情けなくって恥ずかしくって、永四郎の顔をまともに見ることが出来ずに俯いたまま、私は何度も永四郎に謝った。

「……だから言ったでしょう、無理のない範囲でお願いしますよ、と。」
「ごめんなさい……」
「もう、分かりましたから。謝罪の言葉は結構。それより」

永四郎は言いかけて、ぐっと私を引き寄せた。
すっぽりと収まった永四郎の腕の中で、汗ばんだ彼の体を感じて、ああまだやっぱり部活中だったよね、とぼんやり思う。

「大きな怪我をしなくて本当に良かった。美鈴、君がいないと、俺は」

そのままぎゅっと永四郎に抱きしめられると、永四郎の香水の香りが鼻腔をくすぐった。
少し甘めのその香りをかげば、不思議と気持ちが落ち着いてくる。
けれど耳元で呟かれた永四郎の一言が、落ち着いた私の気持ちを簡単に乱すのだった。

「君がいないと俺は、ダメなんです」

その言葉に、私の心臓は早鐘を打ち、耳の奥でその音がとても大きく響いた。
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