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【テニプリ】俺なしでは生きられなくなればいい【木手】

第1章 俺なしでは生きられなくなればいい


友達にはそんな完璧な彼氏だと自分に自信がなくなりそうで嫌だって言われることもあるけれど、私はそんな永四郎が誇らしくて仕方ない。

「すごいよねぇ、どうしたら永四郎みたいになれるんだろう。まず何から始めるべき?」
「美鈴はそのままでいいんです。変に何かしようとすれば、この間みたいなことになりかねない」
「あー…確かに」

永四郎にそう言われて、否定できない自分に少しだけへこんだ。
以前、永四郎の彼女として胸を張れる女になろうと、張り切ったことがあった。

彼の役にたてて、なおかつできる女と言われる一石二鳥の事として、私はテニス部の部室の片づけを買って出たのだった。
永四郎が口酸っぱく片付けをしろと部員に言うのだけれど、男所帯の部室は何かと散らかり気味だった。
それに加えてテニス用具の入れ替えがあった為、古い道具や段ボールが散乱していたので、これを永四郎が部活中に綺麗に片づけてしまえれば、きっと永四郎も私の事を見直すに違いない、と思ったのだ。

「美鈴、無理しなくていいですから。出来る範囲でお願いします」
「分かった。大丈夫だよ、私片付けは得意だから!部活頑張ってね」

そう言って永四郎達を部活に送り出して、私は早速部室の片付けに取り掛かった。
まずは散乱している古いテニス用具をひとまとめにして、部屋の一角に置く。

掃除は上の方からするのが基本だと、おばぁに口酸っぱく言われて育ってきた私は、パイプ椅子を脚立代わりにして、棚の上に溜まった埃を乾いた雑巾で拭きとる。
どうしても舞い上がってしまう埃に時折くしゃみをしながら、黙々と掃除をすすめた。
とくに問題なく片づけを進めていき、ようやく古いテニス道具の整理にたどり着いた。

「あっ、しまった!マット先に干しとかなきゃ……」

積み重ねられたダンボールの下に、汗と砂で汚れた緑色のマットがちょこんと顔を出していた。
何を考えたかその時私は、マットを引っ張り出そうと思いっきり引っ張ったのだった。
瞬間、上に乗っかっていたダンボールがぐらりと崩れてくるのが視界に入って、その後気が付けば雪崩れてきたダンボールの下敷きになっていた。
身動きのとれないまま、ダンボールの重さに知らず知らずのうちにうめき声が漏れる。
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