第6章 爆豪くんのいない四日間
「…っ!」
「橘さん…?」
まただ。痛い。頭が割れるように痛い。
「顔色が優れないようですが大丈夫ですか?」
「…大丈夫。八百万さん、勉強教えてくれてありがとう。」
心配そうに私に手を差し伸べてくれた八百万さんを避けるように部屋を後にした。
頭痛のせいで覚束無い足取り。定期的に襲うこの痛みは何?あの日病室で目覚めてから分からない事ばかり。この頭痛も、ヒーローに対する執着も、得体の知れない恐怖も。
「…っ、…う、ッ!…っ、た、す…て、…っ、ス、テ…。」
無意識に出た言葉。それを言い終わるよりも先に私の意識は途絶えた。私は今、誰に助けを求めようとしたの?
『玲奈。』
懐かしい声が聞こえたような気がした。いつも見る悪い夢じゃない。懐かしくて、恋しくて…けど、それと同じ位悲しくて、一瞬だけ見えた一筋の光は闇へと溶けた。