第2章 正しき社会のために
目を覚ますと真っ暗で、手足の自由が利かなかった。声を発する事も出来ない。首を絞められたせいか、なんだか意識が朦朧とする。その朦朧とする意識の中、誰かの声が聞こえた。
「君のその個性があれば、君の理想とする世界を死柄木弔と共に築いていけるだろう。」
そう言って、優しい口調で話を続ける彼。それは私に語りかけられてるものなのか定かではなかったが、私は神経を集中させ、彼の声に耳を傾けた。途切れ途切れで、全ての言葉を理解出来た訳ではないが、彼の口から紡がれるその言葉は、ステインの掲げる思想と酷似していた。彼が口にした〝死柄木弔〟それが誰の事を指すのか分からなかったが、私とその人が協力すればステインの思想を現在に変えられると。ステインを救い出せると、そう言っていた。
「ステインの為なら私、何だってします。…出来ます。」
先程まで声を出そうとしても出なかった声。不思議とその言葉だけは音として発することが出来た。
「何も怖がらなくていい。僕がいる。」
その言葉と共に私の頭に何かが触れた。そして私は再び意識を手放した。